”転生の犬”『僕のワンダフル・ライフ』
ラッセ・ハルストレム監督作!
少年イーサンに救われ、彼の飼い犬になったベイリー。固い絆を結び、やがて天寿を全うした彼だが、転生を繰り返し、いつかまたイーサンに会いたいと願う。三度の転生を経て、ようやくその時がやってきた……。
犬視点、犬がモノローグでしゃべり、何度も犬生を繰り返す、という、設定だけでおかしい珍作。さすがは『HACHI』のハルストレムだ……。
最初の犬生はいきなり保健所に連れ去られて、子犬のまま死んで終わる。薬殺などの際どいところを見せないのに文句をつけるつもりはないが、これからフィクショナルな話を展開するにあたって、一発こういう現実的な話も見せておこうか、みたいなアリバイ作りにも感じたところ。それよりも、何回も転生するのにこれが最初の犬生というのはどういうことだろう、とちょっと考え込んだ。これ以前はなかったのか、無限じゃないのか。これもまた話の都合か……。
次の犬生でメインのお話が始まり、雄犬のベイリーとして少年イーサンと共に成長することに。ここはさすがに丁寧にやっていて、転生云々のプロットを抜きにしても面白い。会社で意に染まない営業の仕事をやっている父親が段々と酒に溺れていき、イーサンが高校生になる頃に離婚して絶縁状態になるのだが、何せ犬視点だからあまり深いところには踏み込まない。が、『サイダーハウス・ルール』において、堕胎という対症療法に取り組み続けた医者の姿を描いたハルストレムであるから、そうして踏み込まないところこそが、らしいのかもしれないですね。
イーサンはアメフトの有望選手となるが、放火によって負傷してその道を絶たれ、犬が取り持ってくれた彼女とも別れてしまい、農業学校に通うために地元を離れてしまう。そうして迎えた晩年、ついにこの世を去るベイリー……。普通のシーンなのだが、なんでこうペットが死ぬシーンってのは泣けるのだろうか。うちも猫を四匹亡くしているからかな……。
さて、ここからベイリーは生まれ変わり、今度は雌の警察犬に。警官のおじさんは一人もので、犬と生活するその孤独が染みるぜ……。床で寝るように躾けられていたのがいつしかいっしょにベッドで寝るようになることで距離感を表現。このパートはアクション担当で、警察犬はこの警官が容疑者に撃たれそうになったところをかばって殉職する。犬を抱きしめて「救急車を呼んでくれ!」と叫ぶおじさんにまた涙!
このシーン、撃たれる前に川に飛び込んで人助けするシーンもあるのだが、流出した撮影中の動画で役者犬が飛び込むのを超嫌がっていて問題視された。安全対策は講じてあった、というのはそりゃあそうだろうが、所詮賑やかしみたいなアクションシーンなんだから、別になくてもよかったのに……。
転生するたびに犬が死んで、その度に涙を搾り取られるので、映画としてどうこう言うより、ちょっとずるいんじゃないか……という気さえするね。最終パートでやっとこさ、成長したイーサンのところに帰ってくる元ベイリー。予告編でもビックリして声出したが、デニス・クエイドになっているのは成長と言うよりものすごいオッサン化したように見える。またあれこれ取り持ってハッピーエンド!という流れまで文句のつけようもなく、やっぱり所詮は犬なのでそんなにすごいことはしていない、というバランス感覚がいいですね。やっぱり犬好きは必見であろうか……。
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