”ホテル内では厳禁です”『ジョン・ウィック チャプター2』


映画『ジョン・ウィック:チャプター2』日本版予告編2

 キアヌ・リーブス主演作!

 あの死闘から五日……。愛車を取り戻したジョン・ウィックに、新たな依頼者が訪れる。かつて組織の掟に乗っ取り誓印を交わしたマフィア、サンティーノによる姉殺し……。引退を決意していたジョンは一度は断るものの、サンティーノはジョンの自宅を破壊し組織を通じて圧力をかける。渋々仕事を実行したジョンだったが……。

 「ブギーマン」「バーバヤーガ」と呼ばれるキアヌさん。前作は「ガン・フー」とかぶち上げたものの、正直華麗なるアクションとは言い難かった。もう年齢の問題もあるし、そもそもこの人は身体が固いんじゃないかな……性格も固そうだし。キレがないのは「ブランク明けだから!」という解釈もあったが、それなら後半にはメリハリがついてくるとかそういう演出もあり得たわけでちょっと苦しかったかな……。

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 さて、今作はバーバヤーガの復帰第2作ということで、もうブランク明けという言い訳は通用しないぞ、と思っていたところ。果たしてキアヌさんのアクションは華麗さを取り戻したのか……? 結論から言うと全く華麗ではなく開き直ったようにヨタヨタと歩き回り、近接時の銃さばきだけがスピーディ。わけのわからない気迫と不死身ぶりで、ダメージを負っていても構わず前進するゾンビかクリーチャーのようなスタイルに……。うむ、この方がブギーマンぽくていいんじゃないの。強さを感じるかというと感じないが、負傷させても効いてるのか効いてないのかわからないこのスタイル、相手から見たらさぞ嫌だろうな……。今回は多数の殺し屋が相手なので、より「バーバヤーガの伝説」が引き立つような格好に。

 さて、犬が殺されたせいで不本意なビッグ・カムバックを果たした前回のキアヌさん。今作では今度こそ本当に引退したい……のだけれど、現役時代に交わした約定のせいで、もう一つ殺しを請け負わなければならなくなる。ゴネるんだけれど嫌々受けて、散々な目に遭いつつミッションを達成。が、今度は口封じのために依頼者から狙われることに……。
 今回「誓印」という設定が出てきたり、殺し屋組織の息のかかったホテル内での殺しが厳禁の中立地帯であることにスポットが当たったり、前作では「オシャレな小道具」だった殺し屋組織のがメイン級にフィーチャーされている。一応、組織も組合的に動いて連絡網を敷いていたりするのだが、殺し屋個人は完全に使い捨てで、全然保護されていないのな。それなりに名の通っているジョン・ウィックも同じ扱いで、「誓印」だけ守らされて苦労するのに、守ったら守ったでその後裏切られても何のフォローもなし、ホテル内の殺しだけは頑なに止められる……。

 うーん、もうこんなホテル、めちゃくちゃやってぶっ潰しちゃえばいいんじゃないの。しかし冒頭で車を取り返すのにめちゃくちゃやるキアヌさん、どうもこの組織に対しては遠慮深いのである。いや、そりゃあ力関係を考えたら、あまり敵に回したくはないのだけれど、どう考えてもこのせいで引退もできないし、余計なトラブルを背負い込んでる。

 今作では、まずこのやたらと思わせぶりな世界観が先に立ち、キアヌさんがそれに追いかけ回され、振り回される格好になる。もうずばりアウトサイダーになって反抗するか、あくまでインサイダーであるならばルールを逆手に取るなり何なりして地位を確保するかしないといかんのだが、最後の最後でやっとこさホテル内殺しをやるまで、どうも煮え切らない態度が続く。いや、このどっちつかずの茫洋としたいい人感、というのはいかにもキアヌさんらしいと言えばらしいのだが、どうにもフラストレーションの溜まる話だね。こういうローカルルールに過ぎないことで争うより、やっぱり犬が殺されて怒った方が、面白かったんじゃないかな……。

 これからあるだろう続編ではさらに殺し屋を敵に回すわけで、さすがにもう少し切り込まざるを得ないのではないか、と思うところだが、また共通の敵、もっと強力な殺し屋とかが出てきて手打ちするという展開になるのかな……って、それは『マトリックス レボリューション』か……。