”解けて、また蘇る”『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』(ネタバレ)
シリーズ第五作!
呪われた運命を背負った父、ウィル・ターナーを救うため、息子のヘンリーは呪いを解く方法を探し求めていた。海の死神サラザールに捕まった彼は、サラザールも呪いを解く方法を追い、ジャック・スパロウの持つ「北を指さないコンパス」を探し求めていることを知る。投獄されたジャックと出会うヘンリーだったが……。
どうにも仕事もプライベートもいい話がないデップさんが、久しぶりに看板シリーズに復帰しました。仕切り直しのはずだった四作目はほぼなかったことになり(すいません、ほぼ記憶にもありません)、冒頭からオーランド・ブルームが復活。しかし、まあ呪われちゃったけど意気揚々としてたはずの三作目ラストから打って変わって、顔がフジツボだらけの暗いムードに……。いや、愛のために呪いを背負って七夕みたいなキャラになったという話だったと思うが、この呪いって解ける、解かないといけないような話だったのか。じゃあ三作目でオチがついたみたいになってたのはなんだったんだ……。
冒頭のウィルの息子の、父親に会うための活躍がなかなか良くて、こんなジュブナイルっぽい話なのかと思ってたら、あっという間に九年経って青年になってしまった。これは二作ぐらいにわけてもいいネタかと思ったが、まあそこを詰め込まないとちょっとシリーズの寿命がもたないのかな。
子分に見放されてうらぶれているジャックとウィルの息子、そして天文学者志望の女が手を組んで、海のあらゆる呪いを解けるというポセイドンの槍を探す、というお話。基本、ジャックにはいまいちモチベーションがないのだが、かつて海に葬った軍人ハビエル・バルデムが幽霊として蘇って狙って来るので、しょうがなく行動に出ることに。
ちょろっとだけ若い頃のジャック・スパロウが出て来るのだが、この頃はまだギラギラして野心的に見えて、その狂気性にお堅い軍人様はあえなく葬られたのがよくわかる。対して今のデップさんは実績的にはほぼ「上がり」の感が強いし、このジャックのキャラも成り行き任せで主体性をいまいち感じないのだな。そこはベタだけど、「しょうがないからウィルのアホを助けてやるか」とちょっとでもやる気を出してみればよかったのではなかろうか。
あとはジャックと対照的にブイブイ言わせて稼いでいるバルボッサが、生き別れになっていた娘と再会するという話が……いやはや、これも強烈な後付けだな。さすがはジェフリー・ラッシュ、こんな適当な設定でもそれなりに泣かせてくるわけだが、どうも定番の親子ネタをぶち込んで盛り上げよう、という安直な発想がちらついて見える。
呪いかかりました→解けました→死にました→生きてました、という流れを繰り返しているシリーズなので、脱落しても人気orテコ入れなどの都合でいつでも復活するだろうし、新鮮味は全然ない。まあやっぱり元がディズニーのアトラクションなわけで、並び直したらもう一回同じ演目やるのと似たようなことかもね……。
オーランド・ブルームが成長した息子に「立派になったな……!」というシーン、いや、おまえこそやっと童顔が抜けて立派になったよな……とちょっと思っちゃったね。そして最後だけだけど出てくるキーラさん、これは出演なしかなと思いきや、めっちゃ遅れて走って来るところとか最高ですね。
で、やっぱりこの二人のキューピッドはジャックなんですよ、という一作目のお約束も踏襲しているわけです。
ただまあ、これをもって本作が普通に面白く観られた一作目に原点回帰したか、と言われるとそれは怪しい。海賊である理由はどんどん希薄になっているし、呪いの描写や解き方の大味さもなんだかなあ、という感じで……。
また、この感動的なラストも、これだと三作目のオチをハッピーエンドめいた演出にしたのは何だったんだということにならないか……? さらにあの人まで復活したら、ますます無意味化しないか……?
いい加減苦しくなっているのがありありのシリーズだが、もうこれ以上キャストのテコ入れも難しかろうし、今作で少々強引なフィナーレとするのがいいんではないかな。
どうしても作りたければ、若い頃のジャック役の人はなかなか良かったし、プリクエル的に昔の話を三部作にでもしたらいいんじゃないかな。デップさんは時々出るぐらいにして……。
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