”うつくしさとは”『ブラインド・マッサージ』
ロウ・イエ監督作。
マッサージ店を経営するシャーの元に、同級生のワンが恋人を伴って訪ねてくる。商売に失敗したワンを助けるため、彼をマッサージ店に雇い入れるシャー。だが、若手マッサージ師のシャオマーが、ワンの恋人のコンの色香に惑い……。
『二重生活』もなかなか強烈だったロウ・イエ監督の新作。
最近、自分の通っているマッサージ屋も目の不自由な人が施術してくれるのだが、その所作を思わせるシーンがあちこちに。いや、今作はこのディテールと撮影だけで、まあ細かい話はどうでもいいだろ、と思わせる迫真感でありました。
役者は演技しているだけで実際は見える人、本当に見えない役者でさえない人が混在していて、まあルックスでだいたいの区別はついてしまうのだけれど、スクリーン映えする演技と存在感はどちらも満点。
従業員同士の中でやたらモテる人が「見た」ところあまり可愛くなくて、客に人気のある人は確かに美人だが自分では別に自覚がないあたり、日頃気にしてる美醜の認識がどれほど視覚に依存してるかに気付かされますね。
彼らの日常描写の中の細かいディテールを徹底的に積み重ねて来るのだが、無論、性的なこともそこには含まれる。何ら変わりないことがある反面、認識がここまで違うのかと思わされることも。また、生まれた時から全盲の人と、後天的に視力を失った者の差異、さらに「視力を取り戻す」という展開もあって、それら全てを巧みなカメラワークで追体験させて来る。
見ていて、目から鱗の連発で、日頃、自分が何気なく享受している視覚の恩恵を意識させられるし、また、それがない人の世界の、ある意味変わらぬ豊潤さも見えて来る。
結婚願望強すぎでしょっちゅうお見合いしている院長のギラギラした感じや、その院長に頼ってくる元同級生の金のなさ、その間で全然ぶれない副院長の姿も、まさに人生の深さだなあ、という気がするのであります。
原作小説があるのだが、小説なら悪く言えば字で書けばいいだけのこういう設定を、ここまで完璧に再現してみせるのがまずすげえとしか言いようがないし、軽くやったらトンチキな展開になりそうなところに、説得力を持たせてしまうビジュアルの数々もすごいですね。一見の価値はある一本でありました。
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