”時の向こう側から”『ロボット・ソリ』
『ロボット・ソリ / SORI: VOICE FROM THE HEART』 予告編 Trailer
大阪アジアン映画祭2017、2本目!
宇宙から飛来した衛星ロボットを拾ったヘグァン。世界中の音声を記録しているロボットは、ヘグァンの娘の音声データも持っていた。娘は十年も前から行方不明で、ヘグァンは必死に行方を探し続けていた。「ソリ」と名付けたロボットを使って娘を探そうとするヘグァンだが、機密を守ろうとするNSAが迫る……。
今回鑑賞した唯一の韓国映画になりました。NASAの人工衛星に搭載されたAIが自ら意志を持ち、軍事監視衛星の仕事を捨てて地球に降下する。衛星の外部に付いているユニットなのだが、ビジュアルが完全にXウイングから頭を生やしたR2D2なんだが……。
行方不明になった娘を探して孤島にやってきた父親が、墜落現場に居合わせ「彼女」を発見。そのまま持ち帰ってしまう。このロボ、韓国中の通信を録音しているという代物で、『スノーデン』にも暴露されたアウトな奴。NASAとNSAもこれはまずいと回収にくるのだが、親父はこれを使って、娘の最近の声が拾われていないか探し始める。
娘が行方不明になったあらましは最初は語られないので、親父の方もなにがしかの成算があって探しているのかとぼんやり思っていたのだが、映画が進むにつれてもはや目がないことが明らかになってくる。テクニカルな娘探し部分はことごとく空振りに終わるのだが、重要なのは「現実」を受け入れられない親父自身の問題であり、彼自身が内心に抱えた罪の意識である。かつて、娘の夢を肯定できずに叱り飛ばして拒絶し、直後に地下鉄事故が起きたというその事実が、十年経っても受け入れられない。ロボットと共に新たな旅を続ける過程で、やっとそれに向き合い、また自ら「ソリ」と呼ぶようになったロボが、娘の現し身のように思えてくる………。
丁寧に作られて手堅くまとまった映画で、韓国映画におけるいい顔したおっさんが娘探しに奔走する姿は悲しくもコミカルだし、若干のワールドワイドさも微笑ましい。クライマックスの埠頭は『ベテラン』でも使ってたとこじゃなかろうか……?
本国ではパンダの映画に押されて興収は振るわなかったそうだが、まあ確かに良作ではあるものの、インパクトには欠けるかもしれないな。しかし、まったくジャンルは違うんだけれど、実際にあった地下鉄火災事件をモデルにしてると言われると、行方不明の女を探す姿が自然と『チェイサー』あたりもかぶってきたりして不穏な気分にさせられるのだねえ。韓国映画というだけで街のルックが似てるから……。