”結婚はヤダ〜!”『若葉のころ』
リッチー・レン主演の青春映画!
台北に住む17歳の女子高生バイは母と祖母との三人暮らし。ある日、母のワンが交通事故で意識不明になってしまう。母のパソコンから、未送信のメールを見つけたバイは、それが母の初恋の相手へのものだと知る。その頃、その相手リンはやはり大人になり、平凡な日々を送っていたのだが……。
建築事務所で働くリッチー・レン。この時点であれっ『建築学概論』?と思ったけど、仕事は関係なかった。高校時代の初恋の女性が、ピアノコンサート会場で彼を目撃。昔を懐かしむメールを書きかけていたが、交通事故で昏睡状態になってしまう……。
「あなたは立派な大人になっていたわね」と綴られているそのメール、彼女自身がバツイチになりくすんだ生活を送っているがゆえにそう書かれていたのだが、当のリッチー・レンも実にダメダメな生活を送っていたのだった。
ピアノコンサートには恋人と訪れていたのだが、次のシーンで結婚を迫られ破局! ここの逃げっぷりがすごい。一言も返さず、理由さえも述べずに目をそらし頭を振って、ボクサーのウィービングのごとく回避しようとしているような……。まったくケジメの取れないその姿、実際のリッチー・レン本人もコンサートでドニーさんにハッパかけられてやっと結婚した過去があったわけだが……。
一緒に住んでた部屋とか、洗面台が二つ並んでたりして完全に二人住まい仕様。そこまでしといて、しかし結婚する気はないのだな……。さっそく部下の女の子に色目を使われてたりして、おっさんだけど半端にモテるのも原因か。結婚は嫌だったけど、「失くすと惜しくなる」症候群が発動し、落ち込んで学生時代からの友達と飲んだくれる……。
そんな彼らにも、輝いていた時代があったのだ! ということで高校時代に戻る。そこからは延々と昔語りが続くのかと思いきや、ヒロイン役とその娘を二役で同じ女優ルゥルゥ・チェンが演じ、過去と現在が並行して進むことに。昏睡状態の母のパソコンから未送信のメールを見つけた彼女は、それをリッチー・レンに送ってしまう。過去に引き戻されるリッチー。
現代では、結婚に失敗している主人公達を大人世代、娘を子供世代として描いているが、過去編では主人公達が子供世代になり、その担任の教師らが大人世代になっている。現在と過去は対照を描くのではなく、実は今も昔も同じ悩みを抱え、携帯を持ってスカートが短くなっても多くの面で変わらないのだということを描く。
恋愛に対して、確かにピュアではあったものの、一方で目覚めを迎えた性に対する嫌悪があり、それに取り憑かれて振り回されているような大人に対して怒りを抱き、同級生や自分自身にやり場のない苛立ちをぶつける。
両世代の断絶が埋まるかというとそれはなく、ひたすらギャップとして描かれるのもユニークで、全編美しく撮りながらもなかなかにシビアな内容を孕む。終盤に描かれる教師の性的関係への憎悪は、『先生を流産させる会』の男子版といった趣で、男子の性嫌悪というよりは、「寝取られ」への怒りか、日頃聖職者ヅラして権力を振るう生徒指導教師へのコンプレックスか、なかなかショッキングでいいですね! その前のレコードぶん投げがさわやかだっただけに、余計にギャップが際立つ。
娘が倒れてショックのおばあちゃんが、自分は気丈に振る舞ってるふりしながら肉まんを紙に包まれたまま食ってるあたりとか、ちょいちょい微妙に笑えるシーンも仕込んでいるし、娘ちゃんが同級生男子とホテルに行って服を脱がせるあたりは、「ドSか?」と驚きましたね。また予告の最後にあるヒロインが微笑みかけるシーンは、主人公の単なる妄想だったりするあたりも面白いぜ。
レコードのトリックは結構見え見えだったので、ラストに驚きはなかったな。しかし何がしかが昇華されるわけではなく、若い世代も大人世代も悩みを抱えたまま歩き続け、未来はまったく見えないあたり、ほろ苦さの方が先走る映画。だが、希望もある……。
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