”闇の右手”『インサイダーズ』
イ・ビョンホン主演作!
財閥と政治家の癒着の仲立ちをし、裏で操る策士ガンヒ。その子飼いであるアン・サングはミレ自動車から大統領候補への裏金のリストを手に入れるが、野心を隠さずガンヒに託したのが災いし右手を失う制裁を受ける。一方、検事ウ・ジャンフンはその裏金を追っていたが、リストが奪われたために捜査を打ち切られてしまい……。
右手首から先を失ったイ・ビョンホンが、巨大自動車メーカーから大統領候補への裏金を告発する……というのがオープニング。
政治家と大企業の癒着、それを結びつける影のインサイダー……。裏稼業のイ・ビョンホンは黒幕である作家の弟分で、荒事担当。が、企業の裏金ファイルを手に入れてコピーを取り、それを取引材料に自らも出世しようとするが、兄貴分に売られ、制裁を受けてしまう。糸鋸で右手首をザックリいかれる、超痛そうなシーンがっ!
その後、ビョンビョンはすっかり落ちぶれてしまい、クラブのトイレ番に身を落とす……んだけど、盗聴を警戒して働いている振りを装ったり、なかなか抜け目ない。
「どうやらまだ抜けていないな……牙は……!」
そのビョンホンに目をつけたのが、地方出身の検事として中央入りを狙うチョ・スンウ。この人、俺の嫌いな『ラブストーリー』とかでヘラヘラした主役やってたのだが、今回はやっぱりヘラヘラしつつもクールな佇まいでよし。
この二人が喧嘩しつつも手を組み、悪逆極まりない企業、政治、マスコミの癒着を内部から突き崩そうとする。
この癒着はもはや構造として出来上がっていて、この国、この世界で巨大な歯車として回転し続けている。あそこを攻めればこちらに阻まれ、こちらから仕掛ければあちらで潰される。どこにも突破口が見えず、敵の悪辣さはどんどん増していく。冒頭に仕掛けた罠が徹底的に叩き潰されるのが克明に描かれ、どうやっても歯が立たないことが見せつけられる。
途中にはワクワクの性接待シーンなどあり、エロも抜かりなし。が、実はバイオレンスの方は序盤の手首切りがピークで、あとは普通の喧嘩ぐらいだったりする。落ちぶれていかにも小汚くなったように思えるイ・ビョンホンだが、実は汚れ役のようで、ある一線以上は絶対に汚れないクリーンなイメージを保ち続けるのな。『悪魔を見た』でもその悪魔的イメージはすべてチェ・ミンシク任せで、自身は一切の性的な雰囲気を排除していたが、今作も絶妙なところでイメージを崩さない。
R指定かつ社会派要素もしっかりあるのに、ビョンホンのアイドル映画でもあるギリギリの線を保ち、なおかつ完成度も高い。それゆえの物足りなさも少々あるのだが、昨年の『ベテラン』あたりと並べると、韓国エンタメ映画の現在形が見えてくるんではないか。
ストーリー的には主人公側も悪役側も、お互いにあとちょっと頭が悪く、あと一歩詰めが甘いせいで、終盤に似たような展開を二回繰り返すのが少々冗長。告発者のバックグラウンドが問われる、というところを見せたいのだろうが、もうちょっと刈り込めたかな。とはいえ十分に豪快な力作で楽しめました。またチョ・スンウさんの活躍が観たい!
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