”あれは誰だ誰だ誰だ、あれは妖魔”『魔界戦記』(ネタバレ)
「2016冬の香港中国エンターテインメント映画まつり」より。
天界、人間界、魔界に分かれバランスを保つ世界。仙人に仕える鍾馗は、魔界の力を増大させる魔晶石を盗み出し、保管することを命ぜられる。守りきることができれば、魔界は滅び人間界には平和が訪れる……。だが、魔王の命により美しき刺客が迫る。雪児……鍾馗がかつて愛した女、その正体は……。
チェン・クン主演作……なんだが、髭を生やしてるので最初は彼とわからなかったよ。これこそ『画皮』(http://chateaudif.hatenadiary.com/entry/20120829/1346162024)や『妖魔伝』(http://chateaudif.hatenadiary.com/entry/20130827/1377599626)のバリエーションのような話で、また人間と妖魔の恋愛もの。
妖魔が活発になる時期に、天界から街を守るために派遣された仙人が、官吏になる試験に落ちてくすぶっていたチェン・クンを勇者として見出し、妖魔の力の元凶である魔晶石を奪わせる……というのが表向きのお話。その魔晶石を取り戻すべく送り込まれたのが、かつてチェン・クンと恋に落ちた氷の妖魔リー・ビンビンであった……。
妖魔に対抗すべく、仙人はある神器をチェン・クンに与える。それを使えば蝙蝠の力を得て妖魔をも凌ぐ力を持つ巨人に変身できるのだ! うおっ、すごい悪役っぽいルックスに変身したぞ……。全然神器っぽくないぞ……? 巨大化して力を持て余すチェン・クン。よろよろと歩き出すが……えっ、『アバター』……? 最初の訓練シーンのたどたどしいアクションが、何か似ているぞ……?
女妖魔リー・ビンビンは白を基調としたデザインで、黒のチェン・クンと好対照に……って、なんだかシレーヌとデビルマンっぽいな。時々『アバター』、所により『デビルマン』、というところで、世界で大ヒットした大作と極東で大コケした駄作がこんなところで顔を合わせているような不思議な感覚を味わえる。
で、話はデビルマンとシレーヌの恋愛もの。チェン・クンの妹役はヤン・ズーシャンだったが、今回は脇役だから愛されないと気が済まないキャラはほぼ出番なしであった。わかりやすく親しみやすい話を前半に展開するのだが、後半は妖魔と仙人の立場が逆転する急展開が待ち受けている。
勇者と持ち上げられていたチェン・クンだったが、実は官吏の試験で首席だったのに賄賂を払った奴のせいで落とされてしまい、悲嘆に暮れて自害していたことが判明。霊となったところを仙人に妖魔に変えられていたのであった……。魔界には仙人は侵入できないので、魔晶石を奪うには妖魔の力が必要だったのだ……。あまりにルックスが怪物っぽかった理由も解け、さらに街の人間にも怪物扱いされ始めるチェン・クン! さらに恐るべき野望を露わにする仙人……!
「あなたは仙人だろ!?」
「仙人に欲があって何が悪い!」
という清々しいまでの名言があるが、こんな大失敗人事をした天界から何の反省も聞こえてこないのは大問題だな……。
ガジェットは中華だが、きっちり三幕構成してCG全開だから、ハリウッドの大作に結構寄せてきていて妙に見やすい映画になっている。その分、オリジナリティはビジュアルのみで、中華映画祭りの平均打率を体現したような……まあ悪くはないけど人に薦めるかというと……という映画でありました。
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