”あったかーい目”『マジック・マイクXXL』
ダンス映画に続編!
「マジック・マイク」引退から3年。昔の仲間たちに嘘の訃報で引っ張り出されたマイクは、彼らが全員クビになっていたことを知る。最後の一花を咲かすべく、東海岸のダンスコンテストに出場しようとしている彼らに、マイクは最初こそ渋っていたのだが……。
ソダーバーグが製作に周り、パート2が始動。前作から数年後が舞台。家具屋に転身したチャニング・テイタムだが、保険に入れてもやれない従業員一人いるだけでかつかつで商売しつつ、応援してくれていたはずの彼女にはプロポーズを断られている……というなかなかに悲しい状況。
いや、虚飾塗れのショービズ業界から足を洗い、地に足をつけて堅実な道を歩む……というのは立派な決意ではありましたが、そうそう上手くいかないのだねえ。
今回はマコノヒーさんもペティファー君も出てませんが、マカオでショーをやるために旅立ってしまったそうで、ショービズの権化たちは彼ららしい道を突っ走り続けている。そして、マコノヒーに首にされてしまった、ショーの「駒」に過ぎなかった人たちは、さてどうすればいいのか……?
みんなチャニングと同じく、引退後のセカンドビジネスを色々と考えてはいるわけですが、同じくなかなか上手くいかない。それでも人生を切り開いていかなければならない……。そんな悲哀に満ちた情報を打破すべく、いっちょカムバックして、最後に最高のステージをやろうぜ!というのは、まあ何とも後ろ向きにも思える。それよりビジネス頑張った方がいいんじゃないかな……。しかしまあ、捨てられて悔いを残して宙ぶらりんになった思いには、やっぱり決着をつけなければならないのかもしれない。
ソダーバーグの怜悧な視線はどこへやら、トラックで旅する彼らに向けられる目線は実に暖かい。昔を懐かしみ他愛もなくじゃれ合う彼らをバッサリ切り捨てるのは簡単だが、彼らとて成功の道筋も見えないまま足掻いている。ラストショーに向けての旅は、原点に回帰するためのものでもある。彼らのショーは女性客に夢を見させ、楽しませるためのものであるというのが一つ。もう一つはマコノヒーに用意されたお仕着せではなく、自分自身の表現としてのショーをすること。今回はラストショーであると同時に、これからの人生に向けたファーストショーでもある……。
とまあ、話としては悪くないと思うんだが、それにしてもテンポが緩すぎるのだよな。ダラダラ酒でも飲んでまったり観るのがちょうどいいぐらいのロードムービー感覚。最後のショーもコンテストとは言いつつ、別に優勝が目的じゃなくて、参加することに意義があるぐらいの感じで、切実なものがない。やっぱりショービズ界の切った張ったがないと、パフォーマンスも緊張感を欠くんじゃないの、と思わせてしまうあたりが、またリアルだなあ。
充分スーパースターなのに、何だかうらぶれてるチャニング・テイタムの存在感は相変わらず面白く、「俺で良ければ……いっしょに事業計画を見直そう」と仲間に言うシーンのあの絶妙なまでの頼りなさ。「おまえに見せてもな……」と誰もが思うけど、何だか無下にはできないあの感じが素晴らしいですね。
あまりにテイストが違うので、別のキャラの別の話でもよくて、正直『マジック・マイク』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130821/1377052729)の続編としてはパンチに欠ける。あくまで後日談的な映画でありました。
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