”ITでマジ泣き”『ハッピーエンドが書けるまで』


 リリー・コリンズ主演作!


 作家である父が、妻に出て行かれてから3年。娘のサマンサは作家デビューを果たすが、父を裏切った母が許せず、書くものと言えば愛や結婚にシニカルなものばかり。大学で小説講座を受けるルイスと出会うが、憎まれ口ばかり叩いて……。


 ティーンのアイドル的存在であるリリコリが主演。若くして作家デビューしたが、恋愛や結婚にまったく希望を持っていないこじらせ女役。わざと自分より頭の程度の低い男を選んでセックスに耽っている。しかし、ある日、同じ小説講座に通う、もうこじらせ童貞キャラは卒業したローガン・ラーマン君と出会い……。


 邦題はいかにも彼女の書いてる小説が重要そうな印象を与えるのだが、内容に二言三言言及する程度で、話の展開が小説の内容に影響を与えたか、というようなことは別に語られない。最後にハッピーエンドの小説を出版するとかそういう展開もないので、例によってずれた邦題である。
 当然、そこが最終目標でもないし、ツンツンしてたのが同じ本が好きとわかってあっという間にデレる……早すぎるよリリコリ!
 そもそもそうして愛を信じてなかったのが、母親が父親を裏切って浮気する瞬間を目撃し、今も彼女の帰りを待っている父に苛立っていたから……というわかりやすい内容。車の中で涙を流し、「今、すごく怖い。傷つくのが」「傷つけないさ」。……うーむ、ベタな上に展開早いわ……要はライトなんだな。


 父親は最近書けていない作家でグレッグ・キニア、別れた母親がジェニファー・コネリー。眉毛太いつながりだが、ジェニファー・コネリーがリリコリを眉毛もろとも演技まで完コピ。母親役だからって、しゃべり方までめちゃ似せてるよ。こちらはさすがにもうちょっと事情が複雑なんだけど、一本の映画にするほどの話でもない。


 さらに同じく作家志望でスティーブン・キングファンの弟がいて、初めて彼女ができて童貞を捨てるが、彼女はヤク中で酒を飲んだ勢いでコカインを決めて更生施設へ……。悲劇を乗り越えられない彼に、父は「創作に生かせ」と進めるのだが、そういう自分こそ妻に出て行かれてから何も書けていないのであった。
 こうして相互に関係を及ぼしつつ家族全員が再生していく、というのは、よくあるプロットだが、全ての問題があっさりと解決していき、あまりにライト過ぎ。『あと1センチの恋』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20150107/1420634507)のようなワンテーマに絞って振り切った感覚はなく、薄いネタを家族全員分寄せ集めて一本に仕立て上げたような物足りなさ。


 ラスト近く、弟の方に彼の原稿を読んだスティーブン・キングから電話がかかってくるくだり(声は本人)を妻に話したら、「なに、その茶番www」と一笑に付されました。いや、このシーンが、本当に何か空虚ささえ感じる代物でだな……。キングの褒め方も全然やる気がなくて、作品の内容には一言も触れないのだな。ふう……『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131126/1385466331)を思い出すと虚しくなる……。
 だいたい『IT』について語るのに、「ラストはマジ泣いた」って何なんだ……それでも作家か! 言葉を選べ! どうもこれは原作がダメだな。

あと1センチの恋 [Blu-ray]

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IT〈1〉 (文春文庫)

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