”この世界観こそが迷宮そのものなんです”『メイズ・ランナー』


 三部作開始!


 記憶喪失の少年トーマスが目覚めたのは、外界と隔絶された迷路の中だった。生活物資と共に月に一度、迷路の中に少年が送り込まれてくる。彼らは記憶を失いながらもコミュニティを形成し、脱出を試み迷路へと潜入を繰り返していた。だが、迷路の中には想像を絶する危険が待ち受けており……。


 また三部作か……という感じで、これまた食傷気味な企画。これ一本で終わらないのがわかってると、普通に足が遠のくな……。果たして次は見るのか否か。
 ただ、今作に限ってはまあまあ好印象だった。主人公の登場時点で、すでに世界観というお膳立ては全部整っていて、ざざっと説明してあとは活躍するのみ、というシンプルな構成のおかげで、テンポもまあまあ早い。タイトルの「メイズ」が、主人公がやってきた時点で全部歩き回って地図も作成済みというあたり、至れり尽くせり。おかげで単に彼奴めの美味しいところ取りになっているのだが……。


 ゲーム性の高い話に見えて、実はほとんど想像の余地なく、黒幕の思惑通り筋も決まっているので、あまり参加しているような臨場感もない。主人公もキャラが薄いようでいて、役割が付与されているので、観客の分身という感じもない。没入感なく、テンポ良く進む物語を淡々と追っていくことに。


 まあ実にあっさりと塩味で、原作小説もおそらく大して書き込みもされていないのであろう。深く考えずにぼんやり読み進めてOK。いかにもお上品過ぎて物足りないのも間違いないところだが……。
 3年も野郎ばかりで、ホモカップルが二、三組できていてもおかしくないと思うが普通にスルー。さらに女が送り込まれてきても誰一人性欲なしで、『東京島』みたいな展開にはならず。ソースはかかっておらず、ただまあ妄想をふくらませば隠し味として解釈できないでもない料理という感じ。あっさりランチにはちょうどいい。


 これだけ薄味だと、それはまあ三部作になって量だけは満足させようというコンセプトになるか。次回はジャンルが変わりそうだが、やっぱり薄味なのは変わりなさそう。


 久しぶりに『リトル・ランボーズ』の子を見たが、すっかりゴリラになって、しかも救いのない役でかわいそうであった。おまけに続編には出られなさそうだし……。彼を始め、白人男子が揃って保守的なところに若干の含意は感じましたね。相撲で序列を決めるゴリマッチョは、新しい価値観を持ち込まれたり、環境が激変したりで、今までの力関係が変わってしまうことを極端にいやがるのだな。


 しかし、その革命さえも、黒幕の手の内である……ということで、次回はそれを解き明かし打破する方向へ物語は進むのか。いずれにせよ、「さあ、ゲームの始まりよ」と黒幕が宣言しちゃうラストは、ちと辛いものがあったな……。

メイズ・ランナー (角川文庫)

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リトル・ランボーズ [DVD]

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