”奴らを逃がすな”『その怪物』

 

その怪物 [DVD]

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 未体験ゾーンの映画たち2015、2本目。


 祖母から引き継いだ露天商をしながら妹と暮らす少女ボクスン。だが、ある日、依頼を受けて人を殺す殺人鬼テスが、逃げた標的の幼女を追って彼女の家の近くにやってくる。テスはボクスンの妹を手にかけ、ボクスンは幼女と共に逃れるのだが……。


 まあ一応、韓国映画はチェックしておきたいな、と思い2本目。しかしこれはいまひとつであったな……。


 拾い子で生まれながらのサイコパスであった”怪物”と義兄の確執と、学校にも行かずに妹を育てる少女の、二つの兄弟姉妹関係を並べてその対決を描く……のであるが、殺人マシーンの強さに対して、さすがに主人公の少女の頭が悪すぎだろ……。妹を殺され、逃げ込んできた幼女と協力することになるのだが、頭は悪いが体力だけはやたらとある主人公と幼いながら賢い幼女のコンビが、いまいち噛み合わないままで互いに足を引っ張り合うので、全然怪物に対抗できる気がしない。
 これは要は「息のあったバディもの」をやりたいのか、「か弱いながら支え合う姉妹の情愛」をやりたいのか、どっちも中途半端なせいなのだな。
 単に学がない、知識がないだけで、頭の回転が速いか動物的な直感が優れているか、というあたりが描かれていれば面白いのだが、愚直さ以外に取り柄がないので苦しい。怪物は、『アジョシ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111009/1317816944)のマンソク弟をあの表情の演技のままイケメンにしたような感じで、ギラギラした目つきが迫力ある。しかし、まあ冷静でハンター的な気質の持ち主で弱点がないので、ど素人な上に物も知らない姉妹では勝ち目が一向に見えない……。唯一、そのトラウマを突くキャラも別にいるので、段々、主人公の存在意義も薄れてくるし……。


 二組のストーリーが噛み合っていないので、単に別々に進行してしまい、当然合流しなければならないクライマックスでも強引につなげたようにしか見えない。最後、主人公を怪物がわざわざそこへ誘導する理由は何もないよね。


 韓国映画の血みどろバイオレンスを見たいにしてもほどほどのクオリティで、少々期待はずれの一本でありました。

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