”母娘三代に渡って"『スガラムルディの魔女』


 ラテンビート映画祭で鑑賞。


 白昼、強盗を見事に成功させたホセと仲間達。息子を連れ、タクシーを奪って国境越えを図るホセたちだったが、途中、ある街へと迷い込んでしまう。街の名はスガラムルディ。そこでは、今まさに暗黒の魔女たちが、生け贄となる肉を求めていた……。


 スケジュールの都合もあるので、なかなか観られないのだが、年に1〜2本は観てますね。今年は、イグレシア監督作を二本鑑賞。今作は現時点での最新作ですね。


 強盗一味が逃げ込んだ村が、実は魔女の住む村であった……というスラップスティックコメディで、祖母、母、娘と三世代に渡る魔女が登場。さらに子連れ強盗である主人公の妻、さらには刑事までもが追いかけてくる。
 男性側が全て大人子供問わず「生贄」の立場であり、それは刑事も例外ではない。そして「母親」であるはずの女は、いつしか「魔女」側へと取り込まれていく。


 物語の序盤、目の前で明らかにおかしい超自然的なことが起こっているのだが、なかなか常識的な見方に囚われた凡人である男たちには、正常化バイアスが働いてその異常さを異常さと認識できない。気付いた時にはすでに遅し……。事態は加速度的に悪化し、狂乱のサバトへと突入していく。


 しかしクライマックスの迫力など、ビジュアルのこだわりが凄い反面、話の展開はやたらとわめく台詞ばかりでつないであるので、どうもスムーズに転がっている感じがしない。登場人物も人数の割にはキャラが立っていないし、魔女に惚れられる主演の人が飛び抜けてイケメンでもないし感じがいいわけでもないのも苦しい。魔女側のキャラが祖母、母、娘ときちっと記号的な役割分担が出来ていてパワーに溢れているのに対し、主役側のキャラ立ちがイマイチであった。刑事も含めてもう少し人数を絞って、魔女と三対三の関係性が生まれるようにすればもう少しまとまったと思うのだが。
 その点では『気狂いピエロの決闘』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120913/1347529917)の方がうまくまとめて物悲しさまでも放っていたのにな。魔女も含めて腐れ縁的な関係を匂わせるラストには、男女の関係の切れなさ、家族関係の難しさもイメージしているのであろうが、少々必然性に乏しい。


 うーむ、これに比べると『刺さった男』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121030/1351598813)の異様な完成度は、ありゃあいったい何だったんだ……。どっちかしか観ないなら、ぜひあちらを。

気狂いピエロの決闘 [DVD]

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どつかれてアンダルシア(仮) [DVD]

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