”筋肉伝説を継げ"『ヘラクレス』
ブレット・ラトナー監督作!
神ゼウスの超人的な力を受け継いだ息子、と言われているヘラクレス。獅子を素手で倒し、巨大猪を生け捕りにし、七つ首の大蛇を仕留め……と伝説には事欠かない。ある国に傭兵として雇われたヘラクレスは、仲間と共に戦線に加わるのだが……。
『ザ・ヘラクレス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140925/1411645936)と同日に観ました。今作はドウェイン・ジョンソン主演につき、もういい歳のおっさんです。時代としてはヘラクレスが噂に名高き12の試練を成し遂げた後、ということになっている。
……が、今作のヘラクレスは普通の人間で、ゼウスの子云々は後から派生した伝説を、弁の立つ甥っ子が煽りに煽った結果として知れ渡ったもの。一応、巨大なライオンや猪は倒しているが、仲間とチームワークで倒している、当たらずとも遠からずな内容。まあそういう武勇譚はいいとして、それ以前の家族殺しの件(『ザ・ヘラクレス』では綺麗さっぱりスルーされてたね!)はどうなっているのか……? これは実にあっさりと「記憶喪失」でわからん、ということになっていて、真相は映画の後半までお預けなのでした。
このお話の一番有名な部分を丸ごとスルーして、その前後だけで構成する、と言うのが両ヘラクレス映画の特徴で、それはやはり荒唐無稽すぎて映像化したら金かかりすぎるのが原因なのかな。それはそれでしようがないが、作品に適用された「新解釈」が、いかにも無難に100分ぐらいにお話をまとめるための都合であるように見えてしまうのは如何ともしがたい。
神様じゃなく普通の人間で仲間とのチームワーク重視、ということで、VFXで上げ底できないため、ロック様は自力でカリスマ性を発揮していかねばならない。そこらへん、やはり筋肉力を如何なく発揮し、作り話の英雄譚に負けないリアル伝説を築いていくロック様のパワーを堪能できます。もったいないのは、監督がブレット・ラトナーだからか、決してつまらないわけではないにしろ、なんとも薄味なのな。まあまあショッキングなシーンや、大迫力戦闘シーンであるはずが、不思議となんら印象に残らない。「伝説!」「いや、実はこうだよ」「怪物が!」「それはほんとはね……」と盛り下げる方向で話が進むのも原因か。しかし最後は摩訶不思議な筋肉力が炸裂し、「えっ、もしかして本当だったのでは……!?」と撹乱してくるあたり、やはり筋肉は偉大である。
『ザ・ヘラクレス』とは時代も設定も全然違うのだが、なぜか鎖を引きちぎるシーンはどっちもほぼ同じだったりする。これは原典へのオマージュなのか。そして、クライマックスはまさかのシュワルツェネッガー『超人ヘラクレス』へのオマージュ……!? やっぱり映画界におけるシュワちゃんの後継者はロック様なのか……!
ヘラクレスが名声を噂され、傭兵として王様にスカウトされる、という展開には当然裏があり、黒幕の正体なんかも出てきた瞬間バレバレだったりするのはご愛嬌。ちょっと面白かったのが、ジョン・ハート演ずる王様で、なんせもうすごい爺さんだから、これはもう相当治世の長い名君なのだろう、ジョン・ハートだし……と思ったのだよね。ところが、先王はもっと若かったけれど病気で死んで、娘を嫁がせていた老将軍が実権を握っていたために王座についた……ということが明らかになる。騙された! 成り上がりだった! 爺さんだから治世が長いとは限らないのですな。そして、さらにその部下の現将軍が『思秋期』の爺さん俳優なので、爺さんコンビで平均年齢高すぎだろ、ということになってしまう。
敵役が爺さんばかりで、本物の怪物は出てこないし、これではラストバトルは盛り上がらんのじゃないの、と心配してしまったが、そこはきっちりまとめてくれたから安心しました。
怪物と実際には戦わないよ〜と言いつつ、セットの豪華さや人海戦術ぶりなど『ザ・ヘラクレス』よりは金かかってるし、物足りないながらも面白さでは今作の方が上かな。気楽に楽しめる一本でした。
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