"手料理は焼きそば!"『無花果の森』
- 作者: 小池真理子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/04/28
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世界的指揮者である夫・新谷からの暴力に耐えかねていた泉。ある日、週刊誌のカメラマンであるキム・ヨンホがDV取材のために近づいて来たのをきっかけに、ついに彼女は家を飛び出す。行方をくらますため、ある田舎町にたどりついた彼女は、画家である天坊八重子の家で家政婦として働き始めるが……。
それなりに作品数も多い作家なのだが、映像化されているのは極端に少なく、映画化となると『欲望』一本だけ。今作が二本目となる。
原作は新聞で連載されており、その当時に読んだ。傷ついた女と、どこか似た境遇の影のある美形が出会い……というのが小池真理子小説のパターンだが、今作もまったくその通り。夫からの執拗な暴力に耐えかねた妻が家を飛び出し、そのDV事件を追っていたジャーナリストと田舎町で再会する。
ヒロインにDVをくわえる夫が映画監督から指揮者に変更されたのはいいのだが、週刊誌で働くジャーナリストがなぜか韓国人に! 「超新星」というグループのユナクという人。当然ネイティブではないがわりと普通に日本語もしゃべっていて、お話もバジェットもどう考えても地味な企画なところを、日本語もしゃべれる韓流スターをねじこむことで成立させたのであろう、と想像がつく。
ヒロインは原田夏希という女優で、なかなかいい感じに幸薄そう。DVされたりストーカーや痴漢を受ける人というのは、常に違う相手に標的にされている感があるのだが、まさに狙われそうな雰囲気の人でありました。あんまり主体性はなさげだし、特技は掃除、得意料理は焼きそばというあたり、平凡過ぎる!
家出はしたけど、それは解放ではなく逃げ隠れであり、逃避と隠遁をしているヒロインが、旅先で出会った人たちに助けられ癒されて立ち直る……というベタベタな話で、実のところ原作も全然山場がなく、あれっ、もう終わり?という展開になってしまっていた。映画ももちろんそうで、まったく大した話じゃないのだよね。
が、98分の小品には意外とちょうど良かったか、小池真理子的理想のイケメンを体現した韓流スターのちょっと切な目な恋愛ものとしては割合すっきりまとまっていて、軽くキザな雰囲気をギャグにならないように保ったままラストまで通して見せる。ドライにもウェットにもなりすぎない人情話部分も程よい空気感で、小池真理子的小説のニュアンスを良く再現できていたのではないか。結局、これがなかなか難しいから映画化されないのだと思うが……。
さてさて、せっかくだからこの調子で『冬の伽藍』とか『レモン・インセスト』とかも映画化しないかなあ。全部、韓流スター引っ張ってきてもいいから……(笑)。
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