"見えざる者を聴け"『サイレント・ウォー』


 春の中華映画祭り?


 中国国民党の残党が暗躍していた時代。共産党の諜報部隊「701」は無線通信の傍受によってそれに対応していたが、ある時を境に全ての通信を傍受できなくなる。新たな周波数を突き止めるため、腕利き諜報員の「200」にピアノの調律師のスカウトが命じられた。だが、スカウトに向かった先で、調律師の助手である盲目の男を見出した200は彼を連れ帰る事に……。


 なぜかジャッキーの『ツイン・ドラゴン』と抱き合わせで公開。『ツイン・ドラゴン』は最近BDが発売されたばかりだし、自分としても劇場で観ているので、まったくありがたみがないな……。前売り券は共通だが、鑑賞はこれ一択ですよ。


 主人公トニー・レオン絶対音感と優れた聴覚の持ち主。たまたま別の男をスカウトに来た中国共産党のスパイである永作……じゃなくてジョウ・シュンに見出され、暗号解読に協力することに。ところで、目は見えず音だけ聴こえてるんだから、サイレントじゃなくて『ブラインド・ウォー』なんじゃないの……。つい先日『盲探』こと『名探偵ゴッド・アイ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140107/1389096517)があったが、あれも見えてないのに神眼だから、そういうセンスを狙ったのであろうか。常人には聴こえないレベルの音を聴き取るということなので、凡人には無音に聴こえる静かな戦いでもある、という意味かな。


 ただまあ『ゴッド・アイ』を観た後だと、盲目の人の見せ方としては平凡で、異常な聴覚も、見えていないのに見えているように像が結ばれるという演出。まあ悪くはないが、ありがちというか……。


 共産党の腕利きスパイであるジョウ・シュンさん、トニー・レオンの共演は『大魔術師X』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130105/1357385451)以来かな。スカウトされてきた一般人で、愛国心やプロ意識なんてないトニーさんとの間に友情を育むことに。恋愛感情も匂わせつつ、冒頭のエピソードで、彼女のように正体を隠し歴史の闇に潜み続ける存在に、平凡な幸せなどないのだということも示している。
 最初は「ええー? 報酬は?」とか言ってごねてるトニーさんも、潜入の度に長期に渡って出て行くジョウ・シュンのために職務に真剣になっていく。離れていても思いは通じ合うし、姿を変え正体を隠していても帰る場所はここにある……。


 クライマックス前では、『佐武と市 捕物控え』で同じような展開があったなあ。友情とプロ意識の物語で、素晴らしい映画とまでは思わないが、まずまず面白かった。

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