”毒入りチョコにご用心”『甘い殺意』


 大阪アジアン映画祭2014、七本目!


 態度の尊大な新人女刑事と組まされ、教育係を命ぜられたのは、やる気ゼロで臆病者の刑事。実は新人は署長の娘で、危険に巻き込まれず成績も上がらぬように彼と組まされたのだった。果たして、あてがわれた事件は犬の変死。だが、これが思いもよらぬ危険な殺人事件のピースであろうとは……!


 前日に『KIL』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140327/1395915852)、『ある複雑なお話』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20140329/1396060763)と前日に二本、まあいいんだけど辛気臭い映画を見てしまったので、サスペンス・コメディと紹介された今作にはかなり期待していた。


 冒頭の事件が犬殺しなので、これはこの地味な話を延々引っ張り続けるダメなコメディの典型ではないか、とちょっと心配したが、んなこたあ杞憂ですよとばかりに、事件はガンガンエスカレートしていくのであった。
 火サスのサブタイトルみたいな邦題がついているが、内容もチョコレートに毒が仕込まれているというもので……そのまんまやないかい!
 動物ネタから下ネタ、わかりやすすぎる欲望の発露…全編でシンプルな情動ゆえの事件が展開されるのだが、複数の思惑が絡み合うことで、全貌と結末はまったく見えなくなる。しかし途中から着実に、ギャグを盛り込みながらも伏線を回収していき、まったくテンポを落とさない手腕に、何やら安心感さえ抱いてしまったね。これはオチも全部回収することは間違いない……!
 まあ双子ネタやらオカマネタやら、しつこいぐらいのおならやら、小学生かよ!と突っ込みたくなる誰もがわかるギャグであるにも関わらず、処理の仕方が抜群にうまく、思いもかけないところに持って来るのだよな。それでいて、新人の女刑事アリエル・リンと、危ない事をしたくないダメ刑事アレックス・スーの間に、きっちりバディ感覚が生まれてくる王道も押さえてくるのだからあなどれない。脇では、前日の『ある複雑なお話』で男嫌いだったはずの主人公が、今回は旦那のためにコスプレを決める人妻をノリノリで演じていたから驚いてしまったよ。いやあ、確かに同じ顔なのだが、調べるまで気づかなかったわ。


 また、登場人物全員がどこかでつながっている狭い世界の中で、本当に気持ちいいぐらいに真剣味なく人が死んでいく能天気な軽さも素晴らしく、さながら虐殺の様相を呈する終盤も最高!


 台湾映画ということで、全然知ってる役者は出ていないのだが、海をちょいと超えたところでこのクオリティのめちゃ面白い映画が平然と作られ、日本では一切見る機会がなく終わってしまうという事実に思い当たり、ちょっと戦慄してしまった。ありがとうアジアン映画祭!
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幸福遇見 夏日幸福記念盤 (台湾盤)

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