”彼と彼女の事情”『エヴァの告白』


 マリオン・コティヤール主演作!


 1921年、妹と共にポーランドからアメリカへとやってきたエヴァ。だが、結核を患う妹は入国管理局で隔離され、エヴァもまた迎えに来るはずの叔父に会えず送還されることに……。途方に暮れるエヴァを助けたのは、女たちに「仕事」を斡旋している男、ブルーノだった。行く宛もなく、ブルーノの下で働くこととなったエヴァだが……。


 ヨーロッパから戦火を逃れてアメリカにやってきたマリコテさんだが、病気の妹を隔離され、迎えに来るはずの叔父夫婦とも会えず、入国自体もピンチに。そこを通りすがりのホアキン・フェニックスのコネに救われ、彼の下で働くことになる……のだけど、お針子、踊り子さん、そして娼婦と、どんどんエスカレートして行くというお話。


 しかしまあ、素晴らしい美術と撮影の下で、相変わらず美しいマリオン・コティヤールですが、おいっ! ちょっとぐらい脱がんかい! 汚れ役のはずがまったくそれっぽくなっておらず、映してはいけない時代のように匂わせる程度でスルー! おいっ! 今は2014年だ! いったいどうなってるんだ!
 自由の女神コスプレで、酔客に卑猥な言葉を浴びせかけられるシーンが一番いやらしく、またこのような男性ファンの下劣な願望を代弁しておるのだけれど(笑)、まあ実際のところでは暗転ばかりして見事に何も見せず何もしない。


 監督の映画はかつて『リトル・オデッサ』というデビュー作を見て、あ〜なんか救いのない映画だったなあティム・ロスは良かったけど……ぐらいの記憶しかなかったが、今作はぐっと端正。その後のフィルモグラフィをチェックすると、ホアキンを多数起用しているのね。『ザ・マスター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130405/1364987736)のPTAと同じくホアキン力をフルに発揮した映画作りをしていて、今回もズバリ「切れる人」役でありました。最初にお金を盗んだマリコテを怒鳴りつけるシーンがあって、あーなるほど、怒ると怖いね、と思ってたら、その後で店中を走りながら切れまくるシーンがあって爆笑しましたよ。
 で、その昔馴染みで奇術師のジェレミー・レナーさんが、人は悪くないんだけれど奇術師らしく余裕ぶっこいて人を食ったポーズを崩さない奴で、これがまたホアキンの切れる性格を逆撫でしまくるのだな……。


 原題はシンプルに「移民」で、当時のアメリカの世相などもうかがわせる真面目な映画でもあるのだが、邦題に則るならば、今作はマリオン・コティヤール演ずる『エヴァの告白』ではなく、ホアキン演ずる『ブルーノの告白』でありましたな。
 最後に明かされるお話の裏の部分は何となく読めてはいるのだが、いまいち無個性なエヴァよりもブルーノ目線で観た方が実は面白かったんだよ、ということを一気に反転させて見せる結末と、思わず目をみはってしまうラストカットは素晴らしかったですね。

リトル・オデッサ [DVD]

リトル・オデッサ [DVD]

トゥー・ラバーズ [DVD]

トゥー・ラバーズ [DVD]