”キメて、飲んで、ファックして"『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
マーティン・スコセッシ監督作品。
22歳で証券業界に飛び込み、26歳で会社を設立、一躍、時の人となったジョーダン・ベルフォート。ウォール街の狼と呼ばれた風雲児だった彼は、次々と資産を増やし映画を極めるかに見えた。だが、その没落もまた早く……。
実在の人物の自伝の映画化。主演は我らがデカプーで、証券業界で荒稼ぎしまくった男、ジョーダン・ベルフォートを演じる。ほぼ彼の語りのみで構成され、3時間の長尺を一気に突っ走る、怒涛の疾走感。
ヤクを決め、酒を死ぬほど飲んで、女ともやりまくり、完全な詐欺によってデタラメなまでに金を稼ぎまくる。序盤にだけ登場するマシュー・マコノヒーが、まだまともだった頃のデカプーに、わずか数分ながら圧倒的な説得力で、その心構えを伝授。それを忠実に実践し続け、欲望に従って突っ走るデカプー。
フェラーリの色が変わったり、突然主人公以外の内心を表したモノローグが挿入されたり、車は実は壊れていたり、自伝と言ってもそれは一人の人間が語っているということに過ぎないという「フィクション性」が時折示唆される。……のだけれど、それすらも、この「現実にこんなことがあったなんて、すごすぎる、信じられない、アンビリーバボーや……」という感覚をよりドライブさせていく一演出に過ぎない感あり。
かの『ハングオーバー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130706/1373074137)シリーズが、単なるぬるいコメディ映画(まあ実際そうだが)に思えてくるような、確信犯的に酔い、飛び、いってしまう乱痴気騒ぎシーンの数々の裏で、こんな異常な会社に金を預け勧められるがままに株を買ってしまう人たちがごまんといるという事実。そしてその根底には、そのたかが株を転がして金を動かすだけのことを、臆面もなく「努力」と称してしまう自己欺瞞があるのだな。エンディングでも示される、破産した犯罪者にそれでも群がってまで金儲けをしたい人たちの、果てない欲望……。アメリカンドリームの末路、であると同時に、もう少し普遍的な、自分にも近しい事象とも取れる。日本においても、誰とは言わないが中小企業経営者宛に、投資や土地売買の営業電話がバンバンかかってくるのですよ。
……俺は絶対に、こんな奴らから株など買わんからな!
まあ確かに豪邸やら美人妻やら船やらヘリやら、欲しくないかと言われると否定はしないわけで、楽して金が儲かればそれに越したことはない。が、結局のところ、欲しいものを手に入れることだけにリソースを投じすぎたせいで、泳ぎ続けないと死んでしまうサメのようになり、守ることも磨くことも育てることも知らなくなってしまうのだな。それはもう、限度を超えてしまっている。
話術に加え、ジョナ・ヒル共々トリップしたシーンの、映画史に残るカッコ悪さを演じたデカプーの肉体言語は素晴らしく、『ギャツビー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130624/1372065956)さえも演技の肥やしにした感ありでした。
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