”決して目を逸らすな”『ブランカニエベス』


 闘牛版白雪姫!


 産まれてすぐ、母と死に別れたカルメン。半身不随となる重傷を負った闘牛士である父は、後妻の専横を抑えられず、カルメンは叔母に預けられることとなる。叔母の死後、ようやく父と再会するが、カルメンは継母エンカルナにうとまれ、過酷な労働の末に殺害されそうに。辛うじて逃れたが記憶を失い、こびとの闘牛士団に拾われ……。


 この映画を観た直後に閉館の発表されてしまったガーデンシネマにて鑑賞しました。もう一回ぐらい行く機会があるかなあ……?


 それはさておき、まずはモノクロで台詞なしの映画ということで、ひさびさに堪能しましたね。特殊効果がなくても、闘牛シーンの生身の躍動感は伝わるし、牛に蹴り転がされてるシーンのお父さんが人形っぽかったとしても気にしない!
 台詞なしで状況を描写する部分も手慣れたもので、役者の表情や音響、カット割でスムーズに見せて行く。下手な映画でない限り、もちろんサイレントでなくても使われている技法なのだが、こうして取り出されてみると、日頃何気なく見ているものの洗練ぶりがよく伝わるなあ。MMAを見慣れている昨今、久しぶりにパッとボクシングを見てみた時の感覚ですか……?


 死体と笑顔で記念写真を撮る当時の風習には戦慄しましたが、モノクロ映えする美術も全編素晴らしい。元のストーリーは『白雪姫』なのだが、闘牛のアクション要素と父娘関係を落とし込み、ファンタジー要素を排しながらも設定を生かし、オリジナルの物語に仕上げた手腕も巧みで、ラストの展開まで含めて堪能しましたよ。
 全然知らん人ながら、役者も皆良かった。特に継母役の人の魔女じゃないけど魔女っぽさ全開のとこ、意地悪美女っぷりがハマり過ぎてましたね。海外版のポスター見たら、主役を差し置いてメインビジュアルになってるし……作中じゃ雑誌の表紙に写真使ってもらえなかったのにな! 六人しかいない七人の小人、その中の一番イケメンがちょい美味しい役なあたりも面白かったね。


 『アーティスト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120412/1334228276)のような狙った映画ではないが、映画そのもののポテンシャルを強く感じさせてくれる作品でありました。

Blancanieves

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