”次は私のターンだ!”『サプライズ』


 殺人鬼が一家を襲う!


 デイヴィソン夫妻の結婚三十五周年を祝うべく、離れて暮らす三男一女が、それぞれのパートナーを連れて別荘に集まった。当初は和やかに始まったが、尊大な長男とそれに反発する次男はすぐに衝突し、冷笑的な三男と自分だけ可愛がられる長女はあきれ顔。夕食の時間に険悪な雰囲気は最高潮に。だが、その席に、突如、窓の外からボウガンが撃ち込まれる。何者かの襲撃に、協力することもできず逃げ惑う一家だったが……。


 何かよからぬ企みごとをしている者たちがいるとする。計画を巡らし、それは九分九厘まで成功する。巨大な戦艦を鮮やかに制圧し、乗っている軍人もすべて無力化することができた。すべては計画通りに……。
 だが、まったくのノーマークだった一人のコックがなぜか異常に強く、すべての企みを瓦解させてしまう!


 まあ『ダイ・ハード』にしろ、幾多のセガールやヴァン・ダム映画にせよおなじみのプロットであるのだが、今回はそれをぐぐっと縮小版にしてスラッシャー映画に代入した感じ。


 隣家の人が惨殺されるオープニングから、序盤の襲撃開始までが、殺人者たちの正体も目的もまったくわからず恐ろしいのだが、中盤から彼らの「お仕事」感覚が見えてくると怖さは急激に薄れ、反撃を開始するサバイバルキャンプ出身女子学生のあの手この手のサバイバルスキルと、逆にあたふたする殺人者たちの反応を楽しむアクションもののような構図に。
 セガール映画にしろ、序盤は悪役が人質を殺したりして悪逆の限りを尽くすのだが、後半はセガールがその悪役どもを撫で斬りにしていくところを楽しむものだ。今作は山刀やボウガンなどのレトロな殺しっぷりを前半に見せ、後半はサバイバルキャンプならではのブービートラップや手近の家電を使った惨殺シーンを見せる。スラッシャーVSスラッシャーの対決になって、二度美味しい。


 まあそれぞれのキャラクターは、互角のバランスを保ちながら登場人物のほとんどが死亡するまで話を続けるために、やや薄味になってしまったかな……。女子学生はバランス良く生存する能力が高いが、キャラを象徴するような技がない。殺人者集団は、動物の仮面をかぶったり、「YOU ARE NEXT!」と大見得を切って見せるものの、それが作劇上、何の意味付けもないところがもったいない。
 が、一個のネタではもたないから二つ突っ込んだということにせよ、とっちらからずにバランスの取れた内容になってて、まずまず好感触ではありました。こうして終わってみると、ああこういう映画なのねとわかるが、知らずに見てる前半の「誰が主役なのか全然わからない」感覚は面白かった。おらあてっきり、兄貴にいじめられてるダメな次男のデブが奮起する話かと思ったよ。一番親に可愛がられてるっぽかった娘が一番に悲惨な目にあうところも良し。そんなこんなで家族のキャラが立ってるあたりは、後半のお楽しみ、それこそ「サプライズ」に関しても伏線になっている。


 途中でテレビにMMAの試合が映ってるシーンがあり、こういうちょろちょろとした使われ方が、ブームを通り越して格闘技が世に根付きつつあるということの証明の一助になるかな、と思いました。

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