"夢幻乱舞"『トランス』
ダニー・ボイル監督作!
ゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」のオークション会場を、強盗団が襲う。競売人のサイモンは絵を持って脱出を計るが、強盗のリーダーに殴られて昏倒。絵を奪われてしまう。だが、強盗団が盗み出したのは、額縁だけだった……。中の絵はどこに? リーダーのフランクはサイモンと接触し、彼から絵の在処を聞き出そうとする。実はサイモンも裏では彼らと通じていたのだった。だが、サイモンは殴られたショックで記憶を失っており……。
『127時間』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110704/1309755552)以来、ひさびさに観る感じ。山で遭難してもトリップしちゃう話にしてしまうダニー・ボイルだから、今回の記憶に絡んだ話ではほぼトリップしまくり! 主演のジェームズ・マカヴォイが記憶をなくしているのだが、記憶の中の再現映像は悪夢のようで、催眠術師ロザリオ・ドーソンが取り戻そうと多彩な暗示をかけることで、さらに虚々実々のものへと変貌して行く。
マカヴォイさんが、いつもの眉を寄せた真面目なのにコミカルな感じを前面に出して、一見かわいそうな立場に見えて一筋縄ではいかないキャラを演じ、対照的にヴァンサン・カッセルが暴力的なようでどこか憎めない側面を見せていく。それを徐々に掘り起こすのが、ロザリオ・ドーソンの催眠術……。
しかしそんな繊細な描写を見せる一方で、筋はかつてなく強引で、催眠術は「オレはこんな絵を撮りたいんだ〜!」という都合のいい道具になっている感あり。入れ子構造のようになっていく現実と催眠の正逆が反転するようなあたりは、主従で言うと従でしかないのでは、というようなバランス。登場人物がやたらと脱ぎまくり、トリップしたかのようになっていく展開だが、それらダニー・ボイル節とマカヴォイ・フェイスのインパクトがストーリー云々よりはるかに勝っていて、なんとなくダニー・ボイル版の『パッション』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20131016/1381930399)のようであるな、と感じたのであった。
そんなこんなで、筋だけ追っていくと、えええー、となることは必定であるが、それでも元祖リズム感監督ダニー・ボイルの演出は冴えに冴えていて、トリップ感と不条理感に支えられて最後まで突っ走ってしまう。美術やパイパンへのこだわりも最後まで意味がわからず、怪作と呼ぶに相応しい映画でありました。
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