”僕はここにいるよ"『クロニクル』
POVに新機軸?
アル中の父親、寝たきりの母親と暮らす高校生のアンドリュー。生活の全てを中古のビデオカメラで記録しようと思い立つが、学校でもそれをネタにつまはじきにされるばかり。いとこのマットに誘われて渋々行ったパーティでも殴られてしまう。落ち込む彼をマットと校内の人気者スティーブが、近くの洞窟探検に誘うのだが……。
東京のみの限定公開……のはずだったが、急遽拡大されて大阪でも公開されました。まあ発表したのは本当に直前でしたが、たぶん東京公開が始まる前にオファー掛け始めて、遅くても初日二日目の数字で本決まりになったぐらいの感じだろうな……。輸入版BDにすでに日本語字幕が入っていたりして、ほぼスルー決定だったろうが、何とか公開されたこと自体はめでたい。結果論で言うと、最初からきっちり宣伝してやれよって話なんだが。
そんなことはさておき、前評判も相当高かったので劇場で観たかったのだが、やはり輸入版を買ってしまわなくて良かった。特に後半は大スクリーンで堪能しましたよ。
ふとしたことから結びついた、それまで接点の薄かった高校生三人組が、これまた偶然から超能力を身につける。共通の秘密を持ったことで結束は強まり、特にそれまで友人関係に恵まれなかったアンドリューにとっては大きな転機となる。
普段はスクールカーストで分断されているが、話せば通じないこともないし、むしろ気があってしまったりするのだよね。一つ枠を飛び越えれば、新たな関係が生まれる。ただ、そのきっかけが強大過ぎる力であったのが不運で、絡みついてくる家族関係と共に、事態は最悪の方向へと転がっていくことに。
パーティで成功体験をつかんだはずが、最後の最後で挫折を味わう……って、それが初体験でゲロって童貞喪失に失敗する、というあたり、馬鹿馬鹿しすぎて泣けてくる。もうちょっと優しい女に当たってたらまだフォローがあったかもしれないし、酒も少々飲み過ぎだったろう。だが、結局この直後に「僕は上位捕食者だ」などと中学生のようなつまらないプライドで自分を守らなければならなくなる。そして、父親に対する屈折した怒りの爆発……。
一個一個の描写は、どこか類型的で見たことあるようなものの積み重ねなのだが、余計なシーンを極力省いて端的につなげていることで、ストレートに訴えかける力を生み出す。どこかせこせこと狭苦しい手持ちカメラの映像が、大空へ飛び出した瞬間の解放感は圧巻で、メリハリの付け方とギャップの見せ方が絶妙。そして、全編に漂う儚さ……。
主人公自ら撮影したものも含め、散逸した映像を後に編集してつなぎ合わせた「年代記」と呼ぶにはあまりに短く儚いフッテージ。語られないけれど、あのブロガーの女が後に集めたのではないか、という気もするな。ラスト、アンドリューそのものでもあった「撮影」という行為が終わる瞬間も見事でありました。
笑っていても怒っていても、どんなシーンでも全身で泣いているかのようなデイン・デハーンの存在感が素晴らしかったな。今作ではかかる結末を迎えるわけだが、この映画の彼に何らかの救いと再出発の機会を与えてあげたかったのが『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130530/1369840345)で、より象徴的な存在へと昇華させようとしているのがハリー・オズボーン役を演じることとなっている『アメイジング・スパイダーマン2』なのではなかろうか。
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