"ブルース・リーにオレはなる!"『あの頃、君を追いかけた』


 独身時代に最後に一人で観た映画。


 高校生になりながらも同級生と遊んでばかりのコーチン。クラスで優等生のチアウェイに見張られることになり最悪……なはずだったが、彼女に勉強を見てもらううちに次第に気になるように……。チアウェイも歯牙にもかけていなかったはずのコーチンが、段々好きになってきてしまう。とうとう付き合うまではいたらず、別々の大学に進むことになった二人だが……。



 現奥様に「総合格闘技の映画だよ」と言われて観に行きましたが、「天下一武道会」ルールじゃねえか! 騙されたわ〜。まあ時代的にそんなはずはないのは、観ていて途中でわかりましたがね……。作中に『スラムダンク』や『ドラゴンボール』など、ジャンプ黄金期の漫画も登場し、時代性を切り取ります。
 『GF*BF』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130331/1364614827)に続いて台湾の恋愛ものということで、こちらの方がライトなタッチながらやはり完成度の高さは共通しておりますよ。またヒロインの子が超美女じゃない欠点もあるタイプなのだが、何でもないクラスに一人いると輝いている感じが絶妙なリアルさ。最初は興味なかったはずの主人公も段々とハマっていってしまうのだな。高校生から十年後まで同じ役者がやっているので、ビジュアル的に成長がわかりづらい面もあるが、繊細な内面描写でカバーしている。


 まあしかし、自分は全然こういう高校生活を送らなかったので、上手いな〜よく出来てるな〜などと、割と冷めた視線で観てしまったよ。特に、あの男同士でぞろぞろつるむあたりが受け付けなくて、主人公よりもデブに共感してしまった。
 大人になれない幼稚さゆえに彼女に愛され、でも正直になれずに見放される……。大人とは何か、と言うことを常に問われ続けるわけだが、子供っぽさなしでも魅力に欠けるし、結局のところ理性的過ぎるデブでは不足なのだな。だけどあんまり幼稚が過ぎて、いい歳して格闘技ごっこやっててもダメ、なかなかバランスを取るのが難しい。
 そんな中で主人公が、ルックスからしてまさに大人代表である男を、その言葉を逆手に取って凹ませつつヒロインへの愛を表現するラストは、自分では幼稚だと言いつつもそれをすっかり諧謔性にまで昇華させて大人になってしまったことを描いた、見事と言うしかない着地点でありました。


 あの時こうしていれば、ああすれば良かった、そんな気持ちからは逃れられないけれど、せめて飲み込むことはできる、人生に着地点を見出すことが出来る。『(500)日のサマー』のように、今の現実とあったかもしれない理想を並行して描きながら、それに対する主人公の捉え方がまったく違っているあたりも印象的。構成の上手さも光ったなあ。


 自分とは全然関係のない映画でありましたが、しかし面白かったですね。青春もの好きにはおすすめ。

台北の朝、僕は恋をする [DVD]

台北の朝、僕は恋をする [DVD]