"燃えよラッパー"『アイアン・フィスト』
RZAが監督、主演!
叢林村で繰り広げられる、猛獅会と群狼団の争い。総督より金塊の輸送を依頼された猛獅会が一気に勢力を伸ばすかと思われたが、頭首である金獅子が、銀獅子と銅獅子の裏切りによって暗殺される。金獅子の息子、ゼン・イーは父の仇を討とうとするが、銀獅子の放った刺客・金剛に敗れる。重傷を負ったゼン・イーを助けたのは、異国人の鍛冶屋だった。
彗星のごとく現れた洋物カンフー映画、ということで、結構楽しみにしておりました。タランティーノがプロデュースしてルーシー・リューが出てるんだから『キル・ビル』リスペクトだし、メインキャストではないとはいえ、ダニエル・ウーやカン・リーなど中華系映画からの人材もたくさん出ておる。
果たして随所にオリジナルの作品群への愛がひしひしと感じられる映像、展開の連発で、チェン・カンタイの登場するオープニング、三人の「獅子」が大暴れするあたりは興奮しましたよ。
しかし、ワイヤーワークや殺陣の荒唐無稽なテイストは、武術指導コーリー・ユエンで、旧作でもおなじみのテイストなのに、なぜか大仰にパロディ化してるように見えてしまうのは、撮り方のせいか、それはやっぱり洋物だからなのか? いったんそう見えてくると、ジャンルへの愛情も逆に軽く扱われてるように思えてきてしまい、やっぱりこれが見たければオリジナルを見ればいいよな、という結論に至るのであった。
まあ肩の力を抜いて期待せずに見れば、『ニンジャ・アサシン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100330/1269948790)や『エンド・オブ・ホワイトハウス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130618/1371462092)のリック・ユーンとバティスタの激突や、ルーシー・リューとカン・リー、ラッセル・クロウとダニエル・ウーなど、普通なら実現しそうにないクジでランダムに決めたような夢の対決が続出して、なかなか楽しめる。
実質的な主人公はリック・ユーンなんだが、あくまでタイトルの『アイアン・フィスト』はRZAさん。実際、ずーっと狂言回しなのに、後半で急に彼が主役に転換してしまう。まあ初監督ということもあり、他の仕事が忙しくてあまり自分の出番は取れなかったということなんだろうが、そこものめり込めなかったところ。冒頭から、マイノリティの悲しみや、首を突っ込みたいのに突っ込めない葛藤を描いてれば良かったのに、後半に突入するまで単なる傍観者なんだもんなあ。腕を切られるシーンも何か唐突で、僧侶なのか鍛冶屋なのかアイデンティティの描き方も中途半端。ん〜、タランティーノに『ジャンゴ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130312/1362991794)テイストで監督してほしかったね!
でも肉体を硬質化させる「金剛」バティスタを、より硬い「鉄の拳」で粉砕するという、防御力を攻撃力が凌駕する瞬間をわかりやすく見せ切ったラストバトルは良かったですよ。
好事家目線で見ればまあまあ楽しめる映画といった感じでしょうか。人には薦めない。
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