"出るか、スコーピオン・キック!"『サイレントヒル:リベレーション』


 シリーズ二作目。


 父のハリーと共に転校を繰り返しながら各地を回っているヘザー。だが、18歳の誕生日を迎え、異変が起きる。幾度も見る不思議な夢、そして父の不可解な失踪……。残された「サイレントヒルに来い」という血文字に従い、同級生のヴィンセントと共にサイレントヒルに向かうヘザーだが……。


 ゲームをやってないので、意外に評判のいい第一作『サイレントヒル』も面白かったのはクライマックスだけで、あとは「うわ〜、超怖くねえ〜」としか思わなかったのだよな。あの「闇」が来る辺りとか、いかにもゲーム的で、これから襲われますよ〜というのがみんなわかってしまうし、クリーチャーはドーンと明るいところでアップで真っ正面に出てきて、何のハラハラもなかったよね。懐かしい。だが、まあこれに比べれば遥かに面白かったよ。


 前作登場のショーン・ビーンお父さんがちゃんと再登場して、あっ、ほんとに続編なんだ、と逆に驚いてしまった。やっとこさ戻ってきた娘(でもこっちはジョデル・フェルランドちゃんじゃないよ!)は高校生になってて、パパが「教団」の刺客を殺したせいで偽名で転校を繰り返している、という設定。意外に高校やら家やらの話の枕と現在の設定の説明を兼ねるシーンは長い……のだけど、ここからもういつものクリーチャーや怖い(つもりの)映像がバンバン出てくるので、後半の「サイレントヒル」に実際に行ってからと、全然落差がない。こういう枕の部分は、所詮ゲームの設定を生かすための御都合に過ぎないんだから、こここそもっと簡略に描いて、後のお楽しみ部分に集中すればいいのに。


 序盤をネチネチやった割には「サイレントヒル」や「教団」とは何か、という説明は改めてされることはない。原作のゲームがあるし、一作目でネタばらしは終わってるし、もう説明なしでどんどん行けばいいや〜、ということなのであろうが、そのメダルはどういう効能があるねんとか、今作由来の道具立てや、十数年の間の教団の変化もろくに説明されないので、完全に他人事で盛り上がりに欠ける。アイコン依存で簡略化したのはいいが、「一箇所で手を抜くかわりに他のところに注力する」というのはいかにも合理的なように聞こえて、実はすべてを失う一本道なのであろう。映像的にはきっとゲームの再現度なども高いのだろうが、看護婦や三角帽子の人やらの唐突な登場と暴れっぷりは、まさにコントローラーのついてないゲームで、ただ眺めているばかりであった。


 キャリー・アン・モスが最後に変身して、往年のアクションを久しぶりに見せてくれたのは良かったね(全部CGだけどね!)。しかしまあ、そもそも正体がこれだからなんなの、そしてなんでこの二人が対決するの?ということがやっぱりまったくわからず、クライマックスも途方にくれてしまったよ。
 ゲームをプレイしたことのある人向けに作るのは結構だが、両立できるはずの物語の最低限の体裁も守らないのは、「手抜き」か「無能」か、いずれにせよろくでもないわな。『バイオハザード』シリーズの方が遥かにマシだろう。

サイレントヒル HD エディション

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