"失くすと惜しくなる法則"『セレステ∞ジェシー』
ラシダ・ジョーンズ主演作。
学生時代に恋に落ち、結婚したセレステとジェシー。誰もが羨む気の合うカップルだった二人だが、キャリアを積んだセレステは、この関係が永遠に続くことを願い、30歳になったら離婚して友達に戻ろうと提案する。別居したが、すぐ隣に住んで友達関係を楽しむ二人。だが、それぞれ別の相手と付き合う事を考えだした時……。
主演のラシダ・ジョーンズと言えば『ソーシャル・ネットワーク』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101030/1288442495)に出ていたけど、共演のアンディ・サムバーグは「サタデー・ナイト・ライブ」においてジェシー・アイゼンバーグがゲストの回でマーク・ザッカーバーグ役をやって、さらに本物のザッカーバーグもそこに登場したというつながりが……ってどうでもいいわ! でもこのサムバーグ、『ステイ・フレンズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111015/1318689464)なんかにも出ていたはずだが全然覚えてなくて、記憶してたのは結局この「サタデー・ナイト・ライブ」であったよ。
『ヤング=アダルト』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120306/1331007057)以来の、痛い女の話。と言っても全然病気ではなく、人一倍頭も切れて才能も行動力もある女。ラシダ・ジョーンズ演じるヒロインは、アンディ・サムバーグ演じる夫と学生時代からの付き合いで、結婚してからも久しい。でも、順調な自分のキャリアと対照的に、上手くいってなくてその割にはのほほんとしている彼と、いい友達としての関係だけを楽しみたいがために離婚することに。
彼の方も渋々OKした……というところだが、これは完全にやってはいかんことだよなあ。仕事が思うように行かず、依存したような状態になっている男に対する、優位性の乱用。それで気楽さを満喫しておいて、いざ彼が離れていくとなった段で、「失くすと惜しくなる」法則が発動する……アウト! それ、アウトですよ! まさに傲慢。
理路としては正しい面もある行動だったのかもしれないが、理屈として正しいことと、自分がその通りにコントロール役をしていい、ということはまた別である。なまじ友達的な仲の良さがあるから、何をやっても許されるような気がして、結果こういうズレが生じ、過ちを犯してしまうということか……。
後半は、彼の新しい彼女と生活に対して嫉妬する一方、自分のキャリアも行き詰まり、後悔の連鎖が巻き起こる。バカでも人が悪いわけでもないので、その重さがズシリとのしかかり、失くしたものの大きさを噛み締める……。中盤は「こいつ、アホじゃねえの」という感じだったが、後半にかけて本人がその重さを噛み締める展開を見るにつけ、もやもやと同情心も巻き起こる。そして、関係は変わったけれど、友達としての仲は最後まで残る。人生は、苦い痛みと共に続く……きっと永遠に。
実際の体験を元に、わざと恋愛映画の逆パターンをなぞった、ということで、なかなか今までにない感覚を味わえたし、それでいて普遍的な悩みも交えてある。面白い映画であった。「正しさ」を、列の割り込みを注意することになぞらえたあたりは、いささかぴんとこなかったが……。
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