"スマイルを封印!"『デッドヒート』

 ジャッキーと加山雄三が共演!


 日本の自動車工場での研修から香港に戻ったレーサーのジャッキー。ある夜、自動車工場を営む父と共に、違法改造車の摘発に協力していたところ、謎の暴走車が警官をはねるところを目撃する。レポーターのエイミーと共に追走したジャッキーは、辛くも犯人を捕らえることに成功。だが、レーサーで犯罪者でもあったその男クーガーは、脱獄し、ジャッキーの妹を誘拐してしまう……。


 買ったはいいが観ていなかったジャッキー映画の落ち穂拾い。この辺りから、劇場で公開されても行ったり行かなかったりだったんだよねえ。今作は、あまりカーレースに興味がないからスルーしてたはず。


 日本でレースと車の整備を修行したジャッキーが、香港で家族と共に自動車の修理工場を経営中。工場の長男で跡取りというポジション。開始早々、妹に痴漢した男たちをしばき倒す……んだけど、なんかいつもと違うな……。なんだろ、動きはいつもと一緒なんだけど……あっ、いやいや! ジャッキーが笑ってないよ! すげえ表情が固い! 今回はなんとニコリともしない無愛想な男の役だということで、それに一番驚いたね。ストーリーもそれに合わせてか『新ポリスストーリー』ほどじゃないけどシリアス目ですよ。


 まあいつもおどけておるジャッキーが全然笑顔を見せないというのは、それだけで何かちょっと不安になる効果を呼び起こすんですね。引っ張られて、サモハン武術指導の殺陣まで何かシリアス風味に見えてきた。サモハン指導で多いムーブだと思うが、足場から空中に飛び出すも腕だけで身体をコントロールして、戻ってきて蹴りをかます、という技をジャッキーも多用。おなじみ高いところに飛び乗ったり飛び降りたりもあるが、妙に殺伐として見えるな……。
 そう言えばこの頃ぐらいから「ちょっと動きの切れ落ちてきたな〜」とか言ってたわけですが、『ライジング・ドラゴン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130419/1366282712 )と比べたら、遥かに切れ切れだったから驚いてしまったね。


 後半は舞台を日本に移し、澤田研也のヤクザ演技に爆笑。パチンコ屋での出玉大盤振る舞いバトルを経て、カーレースへ! カーレースと言えどもジャッキーチームは手抜きなしで、危ないことをいろいろやっておる。ジャッキーのカーレースと言えば米国進出して振るわなかった『キャノンボール』シリーズだが、今作を自分の人気の足場の一つとなった日本で撮ったことにはもしかしたら意味があるのかもしれないね。


 今作のヒロインはジャッキーを取材する記者なのだが、車やレースのことなど何も知らないので足手まとい! ジャッキーはそれに対していつもむっすーっとしている、のだが、最後のレースで彼女がミスを犯した時、それを励ますために、ついに笑った! 寒そうな仙台のレース場が突然明るくなったよ! まあなんで今作に限ってこんな設定にしたのかは謎であるが、アニタ・ユンという希代の陽性ヒロインに対して、これぐらいのメリハリが必要であったのかもしれないな。


 ジャッキー的には実験作的な位置づけなのな。やや物足りない一本ではありました。

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