"少女は「彼」を見た"『トールマン』(ネタバレ)
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鉱山の閉鎖により寂れた街、コールド・ロック。その街から、次々と子供が消えていく。街の住人が「トールマン」と呼ぶ怪物が、子供をさらっているのか? 医師だった死んだ夫の遺志を継いで街で働く看護師のジュリアだが、ある夜、彼女の家からも子供がさらわれる……。黒覆面の人影を追った彼女が目にしたものとは?
『マーターズ』は観てないけど、いかにも好き者(失礼!)な人たちには高評価ということで、今作は楽しみにしていた。さらに昨年末に閉館となったシアターNのクロージング作品として大きく宣伝されたことや、こちら関西では第七藝術劇場にてわずか6日間の上映となったこともあり、かなりレアな映画となって、自然とハードルも高く上がっていたのである。
見ていれば、どうもこれはクリーチャーものじゃないな、トールマンという怪物が大暴れする映画じゃなさそうだな、というのはすぐわかるわけ。じゃあオチがあるミステリものだろうと考えると、だいたい村中が実はグルになってるか、被害者と思わせた側が実は、というパターンのどっちかにハマるのだろうなあ、と想像。果たして、二つのミスリードを絡めてその通りに進んでいくので、途中でうーんと唸ってしまった。
ハラハラドキドキのホラーと思わせておいて、事態が明らかになると社会派テーマが浮き彫りになり、別の意味の怖さがヒシヒシと迫る、無条件に良きものと思われた母性愛に思わぬアンチテーゼが突きつけられ、揺さぶられる……というのが狙いだったと思うのだが……。「森に潜むかかし(トールマン)が、夜な夜な子供をさらっていく」という言わば都市伝説の裏の真相が、「過疎化した田舎から子供をさらい、都会の金持ちの養子に出して救済する謎の組織がある」というこれまた都市伝説なのは、オチになってるようで、馬鹿馬鹿しさという点では同じレベルな気がする。これで何か社会的な問題を描いたり、深刻な問いを提起したつもりなの?という……。見え見えの叙述トリックと、半端な社会派テーマってことで、貫井徳郎のミステリみたい。
いやまあ、観ていてだいたいこんな感じだろうとわかってしまうだけで、別に悪くはないんだよね。単に期待しすぎただけで、最近の『ボディ・ハント』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121121/1353462225)とか『ドリームハウス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121126/1353924451)程度の映画と思えば、まあまあなんじゃないか、うむ。
そんな中、主演二人は良かったのではないか。ジェシカ・ビールは犯人だけど悪人ではない、という立ち位置にぴったりの演技を見せている。そして、ホラー専門子役ことジョデル・フェルランドちゃんは、表向きの主役であるジェシカ・ビールの裏で、最初からすべてを知っているキーパーソンとして、その存在感を光らせた。『ケース39』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111215/1323875433)の悪魔の子が印象的だったが、今作ではちょっと大人びて、冷静に幸福を求めながらも、失ったもののために涙を流すラストシーンが印象的。これでぐっと映画が救われた感あり。あ、『ラビット・ホラー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111003/1317396564)であった「口の利けない子がモノローグではしゃべる」問題が最後に解決したところも良かったですね。
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