"ゲスはここにいていいのか?"『ヘザース』
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2012/10/26
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高校に通うベロニカは、筆跡模写の特技を見込まれ、学園のセレブリティであるヘザーという名の三人の少女たち、通称「ヘザース」によってこき使われる毎日。ゲートボールの的にされ、いじめの片棒をかつがされ……。日々の苛立ちを日記にぶつけるしかなかったベロニカ。だが、学食でアメフト部の学生相手に空砲をぶっ放したJDという少年と知り合ったことで、彼女は変わり始める……。
高校生ぐらいの頃にVHSで観たかな。二度目の鑑賞。最近、鳴かず飛ばずの主演の二人が、まだまだピカピカに輝いてた時代の映画。
これこそずばりスクールカーストの映画ですな。学校を仕切るヘザーという女子学生三人組のパシリにされている主人公のベロニカが抱えている憎しみ。それに忍び寄り、その憎悪を具体的な形にしてしまう悪魔のような男JD。改めて観ると小池真理子が書いてるようなロマンスで、コンプレックスや鬱屈を型破りな男によって解放される、というのは常道なわけであるが、事態が殺人まで発展するとなかなかハッピーでばかりもいられなくなる。クリスチャン・スレーターは後の『トゥルー・ロマンス』でもポン引き射殺→「なんてロマンチックなの!」というコンボを炸裂させたが、今作のイメージからのキャスティングであろう。
ヘザーやジョックスたちの殺害シーンはスカッとする反面、生々しくも後味悪く演出されている。まさにこれが望んでいたことのはずだったのに、実際にそれが起きたあとの座りの悪さと罪悪感。だが、ベロニカは苦しむが、JDは意にも介さずエスカレートしていく。
やったことの是非は置いて、ハイスクールは少しは風通しが良くなるか、と思いきや、ヘザーたちやジョックスに見下され、下層に位置付けられている者達の鬱屈は、まさに「制度」のごとく彼らを呪縛している。ベロニカとJDのすることは、体裁としては自殺を偽装されるわけだが、「権力者」の死にも関わらず「制度」は美談の名の下に温存されていくのだね。「自殺」を模倣するものが現れ、新たなトップが誕生する。ならばもう、すべてを破壊するしかない……。
親と分かり合えず友人とも疎遠になり、お互いの存在に熱狂するベロニカとJDは、まさに鏡を通して向かい合う半身のようだ。だが、二人は所詮同じ人間ではなく、最後の選択は違った道を選ぶ。すべてを破壊できないのなら、あとは自らが滅ぶしかない。その心につかの間とはいえ触れたから、ベロニカは自らの半身の結末を、最後はただ見守ることを選ぶのだ。
十数年ぶりに観たら、昔よりずっと心に沁みまくったなあ。ほんと俺的には『桐島』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120905/1346763191)とか見てる場合じゃなかったよ! ゾンビ映画で隠喩的に殺すとか、手ぬるいよ! 成績別で分けられた日本の高校は環境的にはかなりましなはずだが、それでもクソ溜めなのに変わりはないし、それ以前の中学に至っては言うまでもなかろう。殺るか、死ぬか、そしてその先にどう生きるかだ!
今作も面白いが、もう一本の学園もの『今夜はトーク・ハード』も傑作なので、なんとかDVD化してくれ!
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クライム&ダイヤモンド ~スペシャル・エディション~ [DVD]
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