"あるがままに戦え"『わたしたちの宣戦布告』


 フランス映画!


 瞬く間に恋に落ちた、ロメオとジュリエットの二人。幸せな日々を過ごすうちに息子アダムを授かり、人生には影一つないように見えた。少しずつ成長するアダムに、異常を感じるまでは……。不審に思って検査した先でアダムに脳腫瘍が発見される。手術、そして長い闘病生活……。立ち向かう二人だが……。


 これはスチール観た感じからして結構良さそうだったのだよね。こないだの『最強のふたり』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120903/1346668306)と言い、密かにフランス映画ブームが……と思ったら、こっちは全然お客入ってないでやんの。


 凝ったストーリーテリングは何もない。病気はただ病気で、最初からそこになぜかある。後から明らかになる事実はあるが、最初からそれを知る事は元よりできないし、医者でない二人には手を出せないことばかりだ。先の見えない看病を、最悪の事態を覚悟しながらも続ける重さ。主人公たちの行動は決してその基本ラインを揺るがす事はできない。
 軽いノリで、愛さえあればと結婚した先に待ち構えていた不幸に対し、それを無我夢中で受け入れながらも一歩一歩前進して行く強さが印象的。諍いこそあるものの、二人の関係がそれで揺らぐ事はなく、映画内における「イベント」にも「フラグ」にも発展しない。監督が自ら主演し、相手役の男性も元パートナーで、実際に二人の間の子供が病気で……というほぼ実話そのものであるだけに、ドラマチックな起伏は排除されている。芋づる式に不幸が連鎖するまでもなく、幼い子供のガンという事実は重大で、現実ではドラマチックなことは何も起きず、その中でただすり減っていくのみ。


 病院や施設、社会保障制度の助けを受けてなお状況は過酷。救急車の出動っぷりや、手術の素早い対応、病院の選択肢など、随所に制度の充実ぶりは匂っていて、映画の中では自然に登場するが、少子化対策に力を入れているフランスならではの部分も多いだろう。『最強のふたり』のドリス家の大家族ぶりも、公的補助があってこそだしな。
 息が詰まることも多く、時にパーティや遊園地に行って息抜きしたりもする。一見、作中で通して語られるような主張はなくメッセージ性は薄いのだが、「現実はこういうもの」「かくあるべし」というメッセージを発しない事こそが、逆説的に「あるがままでいよう」「自分たちのやり方でやろう」というメッセージなのかもしれないな。二人の家族像や、事実婚であるところにもそれを感じる。


 実話ベースなのだが、実際の話がどうなったのかは知らずに観たので、結構ハラハラしてしまったよ。どんな辛いことも理不尽なことも起きるのが実話だから。そして、希望がないわけでは決してないのもまた実話だ。

La Guerre Est Declaree (Bande Originale

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