"カリスマ、オフ会やめるってよ"『桐島、部活やめるってよ』
駆け込みで観てきました!
金曜日。バレー部のキャプテンの桐島が部活をやめた。学校に現れない彼に、苛立つ彼女や級友、部活の元チームメイトたち。一方、映画甲子園で一次予選を突破した映画部は、部長の前田涼也の下で教師によるお仕着せでないゾンビ映画「生徒会・オブ・ザ・デッド」の撮影に入ろうとしていた……。
まずは母校のサイトをさらしておこう。
http://www.ocec.ne.jp/hs/chuo-hs/
ロケ地が高知中央高等学校で、我が母校が大阪市立中央高等学校。この符号やいかに!と思ってたんだけど、まあ中身が全然違いましたな。
サイトを観るとわかるのだが、僕の通ってた高校は単位制だったので、制服なし、部活なし、行事なし、ホームルームなし、決まった教室なし、授業時間ぎりぎりに行って、空き教室か外で飯を食い、授業が終わったら電光石火で帰るという高校生活を送っていた。バイトもせず、受験勉強もせず、塾にも行かず、ビデオ観るかゲームやるか年々数の減って行く連れとだべるかで遊び呆けた三年間であった。
こういう高校生活を思い返し、何が良かったかというと、
この映画みたいな、しゃっつらだけが自慢の女共のクソ陰口や、バカな体育会系の上下関係、いい加減なりもでかいのに狭苦しい教室に押し込まれてジメジメしたつまらない仲良しごっこを強要されずにすんだことだな!
田舎のクラスのごみごみとした距離感の狭苦しさのリアルさに初っ端から辟易! やはり学校制度なんてものはさっさと打倒すべきである。そんなわけで、観ながら逆にここはほんとに日本か!と思っていたのだが、こういう教室の風景がやはり一般的なのだろうね。こんなことと関わり合いにならずにすんで、本当に良かったと心から思いました。理想の高校生活であったよ。
何でも出来るのに何者にもなれない宏樹君が己の身を振り返って嘆くわけだが、いやいや大丈夫だから! 高校生活でなんてな〜んにもせず、 金もなく彼女もおらず勉強でもスポーツでも何の成果もあげなかった僕ですが、今や人に愛され、人格者として尊敬される立派な大人に成長しました(笑)。こんなとこで三年間どうだろうが、別に何も変わりゃしないから!と言ってあげたい。とはいえ田舎の高校生の世界はあまりにも狭く、同級生の一人が二三日出てこないぐらいで揉めたり切れたり全然堪え性がない。こんなちっぽけな場所がすべてであるはずがないんだが、そういうことは意識の埒外。ペラペラの進路希望票が印象的だ。
木曜日を最後に消える不在の存在である「桐島」は「キリスト」のメタファーだそうだが、ここでは音の響きを重視し、「桐島」→「キリシマ」→「カリスマ」という説を採用したい。
スムーズに脳内変換されたが、「カリスマ」とはすなわち、関西映画クラスタにおいてカリスマと呼ばれるこの僕(http://d.hatena.ne.jp/rino5150/20111010/1318263743)を指しているわけですよ。観ながら、急に自分がいなくなったあとのことを想像してたら、ちょっと笑えてしまった。
「カリスマ、来てない……」「ふざけんな、カリスマ……!」
わはははははははは。特にバレー部の傷心模様は心に残ったが、あの副キャプテンによる補欠君への猛スパイク練習のシーンは、オフ会に例えると某F氏による某R氏への無茶ぶりの連発に重なったね! 「カリスマはもう関係ねえだろ!」と叫ぶF氏、いやさ副キャプテンこそが彼の不在を最も悲しんでいると思うと泣けてくる(半笑い)。
しかしながら、別に僕がいなくなったところで、オフ会の幹事なんてよくよく考えれば誰にだって出来るし、そんな騒ぐようなことではない。事実、映画の中にもそんなこと気にも留めない人たちが存在する。神木君演ずる映画部の監督こと涼也や仲間の部員たち、野球部のキャプテンがそうだ。彼らはカリスマ不在など意に介さず、己が情熱のままに映画を撮り、バットを振り続ける。バトミントン部の美果に至っては、カリスマの不在を嘆く者を嘲笑い、補欠の風助に向かって積極的に「(行く)必要ない」とまで切り捨てる。
映画監督、プロ野球選手、亡き姉……。彼らは自分がそれらに決してなれないことを知っている。だがそれぞれの想いを抱え、そこに情熱を傾け続ける。
再び最初の解釈に戻ると「オレ」→「カリスマ」→「キリシマ」→「桐島」→「キリシマ」→「キリスト」→「神」なわけだ。神にすがり、その威を借り、自分を同一化しなければ生きて行けない者は常にいる。だが、小さな世界の完成した神は本当はちっぽけな存在でしかないし、それにすがるということは自分をその小さな枠に当てはめるということに他ならない。神など最初から信じない者たち、疑いを持ったものだけが、そんな枠をポイと超えていく可能性を持っている。それこそがエデンの園を飛び出した人間というものだ。カリスマとして、神のごとく全てに恵まれた僕だが、だからこそそんな彼らを、涼也を、キャプテンを、美果を、愛し敬意を払いたいと思うのである。
オフ会も、あまり僕に依存せずそれぞれに楽しみましょう、という話でした。え、元々してない? それが本来あるべき姿ですね。
ちなみに次のオフはこちらです!
びっくりするぐらい丁寧かつわかりやすい作りで、視点を変えて反復する展開が、すでに鑑賞一回目にしてリピート鑑賞する麻薬的感覚を生み出している。当たり前だが序盤にうんざりした学生たちのいやったらしさも演技や演出あってこそで、細かい細かい。バスケのシーンの躍動感が印象的で、きっちり三人の技量の差が見えるようになっている。なぜか実はバスケ好きだったことに気づいてしまう奴が実は一番下手なのだよね。
一番好きなのは野球部のキャプテンだな。体育会系なのに全然えらそうじゃないし、夏過ぎても引退せずに続けてるからだろうが、後輩にも部活動や試合出場を強要しない。夜は黙々と素振りとランニング。自分にはこういう努力する才能はなかったので、リスペクトしたいところ。こういう人こそが本当にカッコいいのではないか。
最後らへんはちょっと台詞で語り過ぎかとも思ったが、隅々まで行き届いた映画で良かった。ゾンビも観られたしな!
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