"遭難野郎Cチーム"『THE GREY 凍える太陽』(ネタバレ)


 リーアム・ニーソン主演作!


 アラスカの石油採掘場から、作業員を乗せて飛び立った飛行機が墜落した。作業員を獣から守る役目を追うオットウェイの指揮の下、生き残った男たちは生存のために氷原を歩き森を目指す。だが、その彼らを餓えた人食い狼たちが襲う……!


 wikiを観ると最初はブラッドリー・クーパー主演の予定だったそうだが、あんなすぐに諦めそうな奴、ダメだよなあ(偏見)。ということで、リーアムさんです。


 自殺未遂をやらかし、死に場所を探している男が、アラスカの大雪原に墜落したことで逆に生存を計らなければならなくなる、ということで、作中で繰り返される詩の文句と狼のボスの存在を合わせて考えれば、結末はもう見えているのだよね。あまりにそのまんま過ぎて、逆に詩を作った主人公のお父さんは、もう少し比喩的な意味で書いたんじゃないの?と疑いたくなってしまった。このオチならば、墜落した時点で雪原に飛び出して、「かかってこい!」と叫べばそれで終わってただろうに……。
 やろうと思えば、それこそ30分ぐらいで終わりそうな話なんだけど、それでは単に狂人なんで、こういう燃え尽きたい症候群に共感してもらうために延々と二時間引っ張ったという感じ。「ぎりぎりまで生存に向けて頑張った結果として、戦って死ねれば本望」というなんだかややこしいテーゼに沿ったストーリーで、一欠片も共感できなかった。いっしょに行動してた人たちにしたら、こういう人がリーダーになるということは不幸だと思うのだが、途中までは面倒見がいいお父さんキャラなんだよね。この矛盾がもっと噴出していれば面白かったのに。そういう生死に関わることを整理して実感するのは難しいのだ、ということではあるが、一歩間違えれば「貴様らもオレと共に戦え!」という狂信者キャラにもなりそうで、そっちの展開の方が観たかったなあ。


 パチモン臭く、実際の生態どおりなのか眉唾な、悪魔的な狼の描写も含めて「男たちのための寓話」とでもいう印象の映画。やってることが裏目裏目に出て行く展開はサバイバルものとしてはなかなかありそうでないし、そこらあたりは面白い。メガネ落とすシーンは劇場でも笑いが漏れていた。それにしても、エンドロール入った後の「え?」「ええ?」「え〜っ?」という声は面白かったなあ。そこで「これが美学なんですよ!」とわざわざ力説する気にはならない。『Aチーム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100917/1284735417)の監督が撮った『Cチーム』ぐらいの映画として観れば、すんなり入っていけるかもしれないな。

男たちのための寓話―私説ヒーロー論 (1975年)

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