"頼れる者は己のみ"『プレイ-獲物-』


 フランス映画!


 出所を間近に控えた銀行強盗犯のフランクは、隠しておいた金を手にし、妻と娘と平穏な暮らしを取り戻すことを夢見ていた。だが、同房の男モレルが看守を買収した受刑者たちにレイプされそうになったのを助け、刑期の延長を受けてしまう。少女への暴行が冤罪だったことを認められたモレルは釈放されることになり、フランクは彼に妻への伝言を託す。だが、それが悲劇の始まりとなった……。


 最近のフランス製アクションの完成度には、目を見はるものがあるなあ。強引なところも多いんだけれども、シンプルにまとまった構成や、変に社会的なエクスキューズを取らないところなど……ハリウッド映画とずれたフォーマットを持つゆえの面白さと言うか。


 『すべて彼女のために』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100305/1267783038)を観たけれど、この作品も「法律? 人の迷惑!? 知ったこっちゃねえええええええええ! 大切なのは愛だあああああ!」と言わんばかりの、嫁ラブっぷりと公権力への楯突きっぷりが最高な作品であった。さすがはおフランスだよね。
今作でも、主人公は強盗で服役している男。またいかにも風采の上がらない地味なおっさんなんだけれど、冒頭のムショシーンから、腕っ節の強さと脅迫を恐れぬ精神力、同房の男の危機を見過ごしにしない正義感を見せつける。こういう魅力があるからこそ美人嫁にも愛されておるのだよ、うん。


 親切心や嫁愛が仇になってさらなる危機に追い込まれるのだが、ここからこのおっさんの動物的な強さが爆発! 逃走のために走るシーンの躍動感や、いざという時の機転、そしてやっぱり溢れる家族愛に周囲もほだされる。アクションの見せ方も臨場感が出ていて面白いし、空間をうまく使っているね。


 悪役は単体ではいまいちぱっとしないんだが、主人公という家族愛野郎を向こうに回し、妻さえも道具にし仮初めの家族像を演じる男、という設定で対比になっている。口下手だけど愚直な肉体言語と、口ばかりうまいが空っぽの邪悪の対決だ。
 今作では、刑事がわりといい人だったのだけど、やっぱり最後まで、あてにするようなもんじゃない、というスタンスが貫かれている。愛がすべて、己で勝ち取れ、ということだ。


 単純だが決めどころを決めたシナリオで、スカッとした気分にも浸れる良作。