"昔も今も輝くぜ"『サニー 永遠の仲間たち』
韓国映画。大阪アジアン映画祭2012でもやっていたのだが、公開が決まっていたのでスルーしていたのであった。さて、その内容やいかに、というと……。
娘や夫の世話に追われる、42歳の主婦、ナミ。ある日彼女は、母の世話に行った先の病院で、高校時代の仲良しグループのリーダー格だったチュナと再会する。ガンで余命二ヶ月となっていたチュナの、仲間にまた会いたいという願いを叶えるべく、ナミは他の5人を捜し、かつての「サニー」を集めようとする。それは、ナミにとっても忘れていた青春と自分を取り戻すことでもあった……。
現代、2012年から物語は始まり、同じ登場人物の26年前、高校生時代の1986年と同時進行する。カットを変えずに時系列を切り替えるところが上手いんだが、それを可能にした子役と大人の役者のシンクロぶりがすごい。元から似たキャストなのだろうが、顔の特徴や雰囲気作りも含めて、この子が成長すればこうなる、というのが、さもありなんと思わせる。ちょっとした仕草のくせや表情の付け方も統一されていて、ビフォーアフターの違和感を感じさせない。
7人のキャラクター、それぞれ性格もルックスもてんでバラバラなのだが、リーダーを中心にどこか気の合うところがあるのがよくわかる。一本筋の通ったところ、他とはなじめないところが共通してあって、流れやしがらみで集まってるわけじゃなく、見えないけれど通じ合う部分があるんだね。対立するクラスメイトやシンナー吸ってる子には、それがない。
そして、それこそが大人になっても実は消えずに残っていて、バラバラになっていたメンバーを再び結びつけるものなのだ。年食って日常に追われて、昔抱いていた夢と現実は全然違っていて、ギャップばかり感じているけれども、でも本当は何も変わっていないし、失われたわけでもない。自分に取り戻す気さえあれば。
女子高生という設定だが、女子校だからなのか、モデルの子以外は色気もなにもなく子供っぽい、というかほぼ猿だね……。シマを争って他校の女子高生とも戦うあたり、『クローズZERO』なんかも思わせる。ああいう不良ものって、なんかたかが学生の喧嘩をシリアスなことやってるように演出するから寒くてしようがないのだけれど、今作の機動隊との大激突シーンのファンタジックさと来たら……。基本、無意味で、大事に巻き込まれてしまってあら大変、なのだけれども、その無意味さや大事ささえも何が可笑しいのかわからんが楽しんでしまう、箸が転がっても可笑しいあの年頃の楽しさがぎっしり詰まってる。そのファンタジーの中の絶妙なリアルさが素晴らしい。
ポスタービジュアルの子供時代と大人時代の人数が違うので、ここは重要なポイントかと思っていたが、ある意味当たりというところ。唯一大人時代のビジュアルが出ていないモデルの子が、ちょっとジョーカー的な存在で、メンバー内のズレを体現している。もちろん学校生活は楽しい事ばかりでは終わらず、ティーン特有のソリッドさは否応無しに人を傷つけ軋轢を生む。もうちょっとやんわり、うまく立ち回っておけば、こんなことにもならなかったろうに、という話だが、それも含めての若さだなあ。
韓国じゃこれが飛び出せば傑作、というポイントの一つであるドロップキックも炸裂し、ダンスシーンの軽妙さやバイオレンスシーンの鮮烈さ、恋愛話の甘酸っぱさなど、どこを取ってもクオリティが高い。過去篇の日常描写やくどいお婆ちゃんのキャラに感じられる生活感には、家庭や生活のその一筋縄ではいかなさが感じられるし、現代篇は言わずもがな。言う事きかない娘、金さえ出せばいいんじゃないと思ってる夫との通じ合わなさ、いつも混む道でいつも同じ事を言う運転手……。主人公が閉じ込められたそこから、軽やかに一歩踏み出す瞬間の小さなカタルシスが愛おしい。
ベタも王道も貫けばこれだけ面白カッコいいのだ、という、チャウ・シンチー映画を彷彿とさせる、風格さえ漂う傑作。『ミラクル7号』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120327/1332836188)と同じく「サニー」もかかるしな! 赤裸々なまでの女子の変顔も素晴らしい。今年上半期ベストを奪取する勢いだ!
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