"頂上決戦! ストーカー王に、俺はなる!"『ミッドナイトFM』(ネタバレ)


 これは予告が面白そうだった韓国映画


 深夜の人気ラジオ番組「真夜中の映画音楽室」のDJを担当するソニョンだが、娘の失語症の治療のための渡米を控え、ついに番組も最終回を迎えることとなる。慣れ親しんだスタッフと、ゲストのリスナーと共にオンエアが開始。だが、その時、彼女の番組終了を快く思わない熱狂的ファンが、妹と娘のいる自宅に侵入し、恐るべき要求を突きつけてくる……!


 人気ラジオ番組のDJとストーカーの対決を軸に、映画愛と母性愛をまぶしたサスペンス。本番中の二時間をほぼリアルタイムで進行させ、小ネタも盛って飽きさせない。口がきけない娘など、設定に少々食傷気味なところもあったが、『今夜はトーク・ハード』や『タクシー・ドライバー』など映画ネタはうまくはまっている。


 主人公のDJと番組のディレクターの不協和音、二人のスタッフ、そして最終回ということでリスナーからゲストが参加。このリスナーが主人公の大ファンなのだが、いかにも挙動不審で口下手、ちょろちょろしまくり、顔も脂っぽい。自分写真など送りつけてきた過去もあって、主人公からはデブのキモオタのストーカーの扱いされて嫌われている。
 しかし犯人から脅迫と無茶な要求が飛び出した時、このキモオタ氏が真の力を発揮! 圧倒的なオタパワーで、すべての番組内容を記憶している彼は、「何年何月何日の放送の最初にかけた曲」をすらすらと思い出して見せる。おお、すげえ! これで犯人の難題にも惑わされずにすむぜ……と喜ぶべきとこだと思うのだが……主人公は超やな顔! ドン引き! いやいやいや、あんた娘の命かかってるんやん!


 その後も車の運転を駆って出て、事件解決に積極的に協力するのだが、なぜか主人公の家の場所を知っているせいでまたドン引きされる。さらに犯人と肉弾戦を展開し、謎かけを解いて絶体絶命のピンチにも駆けつけるのだが、番組に詳しすぎてまたまたドン引きを誘発! ついに


「僕はあなたを助けたいのに、なんでそんなに嫌がるんですか!?」


と魂の叫びがほとばしる。
 うん、俺はまったくその通りだと思うよ、うん……。圧倒的なまでの正論だ。さすがの主人公も絶句し、こうは言えない。


「だって、キモいから……!」


 キモオタがキモオタスキルを全開して活躍し、身体を張って人命まで救って、それでもなおキモオタ扱いされる、という泣けに泣ける映画。一応、最後は多少扱いがマシになったわけだが、えっ、それで終わり? これはもう結婚してやってもいいレベルの活躍じゃなかったか!? 結婚はダメでも一回ぐらい寝てあげたら……? いやチューするだけでもいいし……ん〜、せめて手ぐらい……。そんな当たり障りない営業スマイルで済まそうなんて、世間が許してもこの俺が許さんぞ! 子供達も絶対「あのおじさんに助けてもらった」と認識してると思うんだけどなあ。
 ちなみにいっしょに観ていた某Yさんにこの意見を開陳したところ、


「いや、無理……。ストーカーやし……」


と、バッサリぶった切られたのであった。くそっ、命を賭した善行は、かくも人の心を打たないものなのか!? やはり「イケメンに限る」なのか!?


 この文章では影が薄くなりましたが、犯人の方もヒロインに対する強烈なキモオタなので、もっとこの部分を掘り下げて、キモオタvsキモオタの、テレビチャンピオンのごとき頂上対決にしたら面白かったかもしれん。互いに問題を出し合い、最後は「貴様、やるな……」と認め合って、「宿敵」と書いて「とも」と読むストーカー同士の熱い友情が芽生えるの。でも最後は善の(?)ストーカーが勝つのだ。


 ラジオ番組の映画ということで、題材的にこれはぜひシネマハスラーでも取り上げて欲しいなあ。誰かリスナー枠に応募してくださいよ(他力本願)。