"子供達は山に消えた"『カエル少年失踪殺人事件』


 韓国の三大未解決事件の一つを映画化。


 「山にカエルを取りに行く」そう言って、朝早くから出かけた五人の少年たち。だが、その時を境に彼らは忽然と姿を消してしまった……。数年後、捜査は進まず、行方も未だに明らかにならない。当地に左遷されてきたテレビプロデューサーは、事件当時黙殺された大学教授のインタビューを元に、事件を解決して名をあげようとするのだが……。


 なかなか面白かったなあ、とは思ったが、それは主に事件のあらましがわかって勉強になった、ということであって、映画としては少々物足りない部分もあり。
 やらせで名を為したプロデューサーを主人公に据え、名誉欲に端を発する冤罪報道を延々と描き、報道と捜査の倫理を問うのだが、その冤罪を形作る論理を支えてるのは、ほぼ妄想なのである。一見もっともらしい理屈を重ね、妄想に妄想を重ねて「人は信じたいものを信じる」というテーゼを描くのだが、それら妄想の解析に映画の半分ほどを費やす辺り、未解決事件らしく実は「ネタがない」状態で作ってたんだろうなあ、と思わせる。


 さらに、その妄想を組み立てて行く過程が、作中で一番面白いのだよね。トイレから出て何歩! 大の大人がわざわざ女子用トイレに入って三十秒でウンコを!? と、それがいかにも殺人犯である証拠のように語るあたりに笑ってしまった。
 後半、この妄想を爆裂させてた大学教授は消えてしまって、一人体制になったプロデューサーが『MAD探偵』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110308/1299510758)のごとく事件現場に横たわるのだが、このあたりでは少々話に対する推進力が落ちてしまっていたね〜。最後に「犯人」らしき人物にたどりつくのだが、ここらへんでも妄想か否かという虚々実々なムードがあればより深みが出たのではないか。
 親族かわいそう、犯人ひどいやつ、で、おしまいなのは、結局実際の事件から読み取れるものもそれぐらいである、ということなのだろうが……。


 泣かせくさい大げさな音楽がかかるほどには深く堀り下げた内容でもなく、三大事件の最後の一つだから映画化したけれど、そもそも語るほどの内容がなかったということかな。実際の事件に対する知識があれば、最後の犯人像の信憑性などもより深く味わえたのかもしれない。


 他の二作も観て、出来栄えを比較してみたいですね。『殺人の追憶』は傑作と聞くけれど。

MAD探偵 7人の容疑者 [DVD]

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殺人の追憶 [DVD]

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