"立て! がんばれナナちゃん!"『ミラクル7号』

 チャウ・シンチーの今のところ最新作(どうなってるんだ、いったい……)。ブルーレイにて鑑賞。


 工事現場で働く父と暮らす、小学生のディッキー。貧乏暮らしで靴もおもちゃも満足に買ってもらえない毎日だったが、ある日、父が拾って来た緑のボールから、謎の生き物が誕生する。ミラクル7号と名付けられたそれをつれて登校するディッキーだったが……。


 大阪アジアン映画祭2012の『星空』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120325/1332664607)において、主演の子が成長して出演していたので改めて見直した。女優に変なメイクや演技をさせるのが定番のチャウ・シンチー作品らしく、今作では男の子役である。ややオーバーアクト気味なぐらい明快な演出がされているが、この頃から上手いな〜。


 貧乏だけど、悪いことをせずに真面目に生きよう。勉強して人のために役立つことをしよう。素朴な価値観を下敷きにして、父と子の関係を描く。そこに絡んで来るのが宇宙犬のナナちゃん。旧作のパロディを始め、シンチー作品ではおなじみなダイナミックな映像作りが楽しく、CGを多用しながら身体性に溢れている。ナナちゃんも最初はキモいんだが、段々と生き生きしてかわいく見えて来るんだよね。
 小品ではあるが、シンチー演出の全てが詰まった佳作。


 『星空』と同じくアジアン映画祭で公開された『高海抜の恋』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120321/1332344243)を観ながら、思い出したのは今作のことであった。私事ではあるが、観た当時、ちょうど父が急逝したこともあり、この映画のラストは深く心に残っている。一度崩れ落ちそうになりながらも、決然と立ち上がるナナちゃんの姿は、もう涙なしには見られないのである。