"それからは逃れられない"『クライング・ゲーム』
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2012/04/20
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英国軍の黒人兵士ジョディは、カーニバルで女に誘惑される。だが、それはIRA(アイルランド解放戦線)が彼を誘拐するための罠だった。ジョディを人質に、仲間の釈放を迫るIRA。捕らえられた三日の間に、ジョディが見張りについたファーガスという男と会話する内に、二人の間には不思議な交流が芽生える。だが、IRA構成員の釈放はならず、ジョディを処刑する日がやってきた。ファーガスは自らけじめをつけるため、処刑役を買って出るのだが……。
会社のKさんにDVD借りた、また課題図書(笑)。
最初は雰囲気映画かと思ったが、結構緻密に作ってある感じが中盤から見えて来る。ネタは観ててすぐにわかったけれど、主人公は気づかない。台詞が序盤の監禁シーンからずっと思わせぶりで、中盤に恋愛モードに突入してからも主語をぼかしたりした妙にピントの合わない会話が続く。最初はだから、雰囲気作りのために格好ばかりつけた意味深げなだけの台詞を乱発してるのでは、と思ったのだが、これは途中のサプライズに向けた演出の一環なのだよね。
フォレスト・ウィテカー演ずる兵士と、その恋人がどっちもその手の話法をするので、おまえら家でもこんな会話しとったんかい!と突っ込みたくなるのだが、主人公がそれについていけてるようでついていけておらず、曖昧な返事をしたりしてペースに巻き込まれてる様が面白い。ただそんな会話が延々続くだけなら疲れてしまうのだが、この曖昧さこそが中盤の仕掛けの肝。もうちょっとはっきり物を言い合ってれば、さっさと気づいたはずなのだが。
主人公はテロリストの一員なのだが、真面目で不器用で、要領悪い性格なんだよねえ。能力がないわけじゃないんだが、冴えない感じで全然向いてなさげ。そんな男が約束を果たそうとし、自覚していなかった自分と言う存在に目覚めていく姿を描く。カエルとサソリの寓話で語られる「性(さが)」の話が印象深い。
もちろん恋愛ものでもあるわけで、中盤までの思わせぶりから一転し、事実を知ることをきっかけに、徐々にヒロインに率直な物言いが増えていくあたりがロマンチック。二重の意味で二人の宿敵となるミランダ・リチャードソンも最高だね。
さわやかな話だった。観ている間はそうでもなかったのだが、終わってからじわっと良さが伝わってくる名画。DVDにはもう一つのバージョンのエンディングもあったが、公開版の方が断然いいよね。顔に袋かぶせてるシーンはちょっとぎょっとしたので捨て難いが……。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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