"歯ってどうやって食べるんですか?"『ダーク・フェアリー』
ギレルモ・デル・トロが製作・脚本!
建築家の父と共に古い屋敷に引っ越してきた少女、サリー。数日泊まるだけ、と思い込んでいたサリーだが、実際は父は離婚を計画し、キムと言う女性との再婚を進めていたのだった。以前から情緒が不安定だったサリーは、父ともキムとも折り合いが悪くなる。そんな時、封印されていた地下室が発見される。そこは、かつて住んでいたが行方不明になっていた画家の仕事部屋だった。そこでサリーは不思議な声を聴く……。
勝手極まりないイメージだが、ギレルモ・デル・トロは自分好みの映画をたくさん撮りたいけれど手が回らないので、舎弟をたくさん作って監督させてるような印象。幽霊譚『永遠のこどもたち』、SF『スプライス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110118/1295315427)、ジャーロっぽい『ロスト・アイズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110627/1309106340)、そして今作……。いずれもデル・トロ本人の志向するエッセンスが色濃く投じられ、多彩ながらも独特の方向性が感じられるものになっている。
……が、必ずしも成功作ばかりになるとは限らないのが世の常……。
予告編からやや見せ過ぎな印象があったのだが、「小さい人」たちが姿を見せてからがなかなか盛り上がって来ない。重要な道具立てや伏線かと思われたものが少々機能し切らず、「小さい人」は存在するのか?という作中の命題の扱いがおざなりになってしまっているのが残念。カメラとか、もっとうまく使えたと思うんだが……。
で、カーナビや携帯のある思いっ切り現代の話なのに、あそこだけポラロイドなのが妙に浮いているんだよねえ。リメイクの舞台設定が現代になった結果、舞台設定と齟齬をきたす……というのは、もう少し真剣に考えられて然るべきことかも。
ケイティ・ホームズ演じる継母未満の女性の視点と、その「手のかかる子供」である少女の視点を行き来するのだが、こういう時に「お父さん」役は本当に全然役に立たないなあ、とガイ・ピアースを見ながら思う。このパパの追いつめられっぷりと人間の小ささが素晴らしく、まさに定番ですな。そして実の母親の母性の完全放棄ぶりがひどすぎて逆に笑えて来る。その両親を尻目に、女性キャラ二人が段々と結束を強めていく辺りはなかなか良い。それがあのラストにつながるわけだが……。
『パンズ・ラビリンス』の髭剃りやら、『ロスト・アイズ』の眼球ぶっ刺しやら、身体的な痛覚にこだわりがある印象だったが、今作は「歯」が題材、ということで、冒頭の打ち砕きはなかなか痛そうであった。しかし、これも後半にかけてまた登場するかと思ったら放置、ということで、物語の作り込みがやはり甘いなあ……。そもそも歯を欲しがるのはいいが、歯を取られた子供の末路やその歯自体はどうなるのか、など匂わせる程度のこともないので、先を妄想することもない。それがまた、あのラストの唐突な感覚につながっているのだが……。
かなり期待してたんだが、物足りない内容であった。ちょっと怖いファミリー向け映画ぐらいの位置づけかな。
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