”給料良ければブラックじゃねえ!?”『エグザム』

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 ワンシチュエーションの密室劇。


 超有力企業の採用試験に残った8人の男女。最終試験に提示されたのは、密室での80分の時間、一枚の白紙の問題用紙。紙を傷つけたら失格、警備員と試験監督に話しかけたら失格、退出すれば失格、問題を見つけ出し答えを見つければ採用。疑心暗鬼と競争心の渦巻く中、謎の試験が幕を開ける……!


 これ、公開前に予告観て結構楽しみにしていたのだが、東京でレイトのみの公開だったのであった……。職場の人から『縞模様のパジャマの少年』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101114/1289713190)に続く課題図書として指定されたので観たのである。


 状況は『キューブ』みたいだし、このパターンはあのシリーズの一作目にも似とるね……あ、感想終わった(笑)。まあそのネタバレになりますんで、あまり詳しくは言えませんが、ちょっとすれている人なら、だいたいこの人が怪しい、この動作が怪しい、というのには着目できるのではないか。しかし、あれはあの人による「ヒント」だったのか? だとするとすごいわざとらしいことをしてたことになるが……。


 ワンシチュエーションの中では色々と工夫がこらされているのだが、ちょっと風呂敷を広げ過ぎて、背後にある話が大きくなりすぎているような……単に採用時の見返りの大きさを表現するためとしては。それでいて、そのバックの大きさを実感できるまでには至っていない。なんせ密室劇ですから……という構造的矛盾。


 で、これで本当に有能な人を選んだことになるの?と言うと、それも微妙な気がするし、このルールなら力で全員を倒して紙を破いたら勝ちになる、バトルロワイアル形式になってしまうような気がするな。過去の試験の模様、とかがちょっとでも知れてたら、「失敗例」ということで、そういう変な可能性も排除できたと思うが、観客に先入観を与えないための判断か。これだと、暴力禁止、人の紙破いても失格、ぐらいのルールがないと成立しないような……。


 まずまず面白かったが、もう少し細部を詰めるか、あるいは理が勝ちすぎない、腑に落ちる感覚を求めること自体を否定するホラー的なラストの方が良かったかな。どうせ狂ったワンマンのブラック企業なのだが、それのやることを何か世の中にとって必要なことなのだ、と持ち上げるのも気持ち悪し……。

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