"報われなくともよいのです"『スパイダーマン』

 もう今さら何か書くまでもないような気がするがなあ。4回目ぐらいだけど、改めて見直したので……。


 叔父夫婦に育てられ、隣の家に住む幼なじみメリー・ジェーンへの恋に悩むピーター・パーカーは、ただのひ弱な高校三年生のはずだった。だが、社会見学で訪れた研究所で、遺伝子を組み換えたクモに噛まれたことによって、超人的な力を持ってしまう。その一方、ピーターの親友ハリーの父であり、科学者でもあるオズボーンは、軍からの援助を打ち切られることを怖れ、自らに禁断の人体実験を施していた。時を同じくして誕生する二人の超人。運命が今、動き出す……。


 トビー・マグワイアは初めて観たのが『カラー・オブ・ハート』、この時は、


「なんか古風な顔で、存在感あっていいな〜。これから出て来るかも。でも大ブレイクはしないだろうけど」


ぐらいの印象。その後『楽園をください』『サイダー・ハウス・ルール』『ワンダー・ボーイズ』で立て続けに童貞役を演じ、ブレイクの兆しが見えてきたか……と思ってたら、まさかの『スパイダーマン』の主演に起用ということで、死ぬほど驚いた記憶あり。
 サム・ライミもこの数年で撮ってた『シンプル・プラン』『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』『ギフト』とみんな好きだったんだが、こんな大作を撮るとは思ってなかったなあ。


 スパイダーマンとグリーン・ゴブリン、二人の超人の誕生とその変化を並行して描いて対比させ、二組の父と子、一人の女をも絡めて描く構成は今観ても過不足なくシンプルだ。薬品に侵され狂気と欲望に取り憑かれるウィレム・デフォーの熱演も素晴らしく、続編を通してみてもピカイチの存在感。そこから尾を引いていくジェームズ・フランコ演ずるハリーとピーターの軋轢まで含め、今作できっちりと人間関係や心理を描写してみせたことが、シリーズの強堅な土台となっていることがよくわかる。


 そしてMJですね〜、キルステン・ダンスト。かわいいのは『チアーズ!』まで!なんて言われたりする彼女ですが、いやいや違うよ『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』までの間違いだろ……(過去すぎる)。アメリカでは人気の顔だそうですが、確かにちょっとピンとこない顔でもある。さらにこのキャラクター、しょーもない金持ち野郎とばかり付き合いたがる。ダメな臭いがプンプンしてます。
 でもねえ、そんなことはどうだっていいんですよ。ピーターは幼き頃から彼女を愛している、そのことが重要なんです。
 こんなダメな女に対して、なんでそこまですんの? どうして命まで賭けて必死になっちゃうの? ……だからこそカッコいいんじゃないですか! 美人で自分の事を大切にしてくれる女に尽くすなんて、当たり前なんですよおおおお! 全然そうじゃない女にそうするからこそ尊いんじゃないですかあああああ! 
 そしてついに愛を勝ち取りながらも、背を向けて立ち去るこの報われないラスト! 最高過ぎる! 『ダークマン』観とくと倍は泣けるし、これがあるからこそ『2』は百倍泣けるんだ。


 メジャーな超大作ですが、「オレの映画」という気がする個人的な思い入れの強い作品。
 さて、今度のマーク・ウェブ版には何一つ期待してないんですが、果たしていかなる作品になっているかな?

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