"トニー・ジャー・レボリューション"『マッハ!参』

マッハ!参 [DVD]

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 シリーズ完結編は、残念ながらDVDスルー!


 鴉男との死闘に敗北し、父の仇ラーチャーセーナに囚われたティン。拷問によって瀕死に追い込まれた彼だが、処刑寸前、アユタヤ王の勅命により命を拾う。山奥の村で幼なじみのピムに手当を受け、復讐を捨てて静かな暮らしをしようとするティン。だが、再び敵の魔手が伸びる……!


 不評だったから心配はしてたが、そんなに悪くはなかったなあ。あらゆるアクションを思いつく限り詰込んだと思しき『マッハ!弐』だったが、要は『マトリックス・リローデッド』のようなもので、今作はお話をまとめにかかった『レボリューション』なわけですよ。


 前作で最強の敵、鴉男に敗れ捕らえられたジャーさんですが、13種類の拷問(画面上に出たのは3種類ぐらいか?)を受けて、全身の骨という骨を折られ廃人に。医療村のようなとこに運び込まれて治療を受けるのですが、包帯巻き過ぎ、お灸盛り過ぎで、完全に『カンフー・ハッスル』のチャウ・シンチーみたくグルグル巻きにされてるのが可笑しい。
 村の一番えらい人が、「彼は前世の業によってここまで傷ついたのじゃ」とおっしゃり、「彼のために仏像を作って祈ろう」と言い出すあたりは「何言ってんの?」とちょっと思いかけたのだが、鋳型に埋められて完成を待っていた仏像が、ついにその姿を現す瞬間と、ジャーさんの包帯が剥がされて癒された顔が露になる瞬間がだぶる演出は良かった。この後も、仏像は再生したジャーさんの象徴として、これでもかこれでもかと出てきます。


 全体にめちゃめちゃ大仰な演出の連発で、そのせいか前作は「一大叙事詩の幕開けだ!」と勘違いしかけたぐらいだったのだが、その瞬間的迫力は本作でも健在。しかし、前作終盤からごそっと減った登場人物をそのままに、「もう風呂敷広げるのはやめて終わらせよう」と話を畳みにかかる。間に連呼されるのが、主人公ジャーさんの前世のカルマ……。うーむ、前世=役者トニー・ジャーとすると、前作が中断のような形になってしまったのを自省しつつ、残りの製作費で収めるために大人の事情が発揮されてるように感じるのは気のせいか……?


 結果としてアクションも少々少なめで、なるほど中盤のトニーリハビリ中の際は禅問答のようなことばかり言っている。ただ、ヒロインの踊り子によって立ち直るシーンは、身体の機能の回復と踊りの叙情性、心の絆の再生を身体性でのみ表現しきって見せる名場面。たぶん、ジャーさんはダンスやってもうまいと思うよ。
 復活後のジャーさんのアクションは、前作より運動量が落ちているのだが、これは瀕死からの再生を経て肉体的な力は落ちたものの、それによってより達人の境地へと近づき、無駄に攻撃的な動きを減らしたことの表現だよね。


 さて、悪役は父の仇の権力者であり、もう一人アクション担当で対決の見せ場を作る役として鴉男がいる……と思っていたのだが、これが後半まさかの一本化! えっ、鴉男ってそんなキャラだったんだ! 物凄い勢いで話の構造がシンプルになっていく。完全武装の兵士をものともせず、寺院を一人で全壊させ、強烈な切株シーンをお見舞いした鴉男は、自ら権力の座についてジャーさんを待ち受ける。空を舞う鴉の大軍、戦いの際には皆既日食が起きる! スケールでかすぎるぜ! メイクはジョーカーっぽいよね。
 しかし黒衣を捨てて権力の座についた鴉男は、少々世俗的なものに毒されて神秘性が失われたように見え、悟りを開いて仏像と一体化したジャーさんに対して分が悪くなったように見えてしまったなあ。
 最終決戦は……まさかのスコピル演出! えええええええ!?


 うん、『弐』に感じた期待感プラス「続くかも?」のモヤモヤを払拭するためには、正直物足りなかったように思うが、ようやく捻出した製作費で(知らんが)ちゃんとオチまでつけたわけだし、単品としてもそんなに悪くない。前作と合わせて2時間半ぐらいにまとめたら充分だったような気もするが……。でもよく頑張ったよ、ジャーさん。また次回作楽しみにしてるからね!

マッハ!トリロジーBOX(初回限定版) [DVD]

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