"新木場1st超満員札止め!"『アベックパンチ』


アベックパンチ完全版 中巻 (ビームコミックス)

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 東京のブログ仲間の人が、エキストラで出てるらしいんですよね、この映画。まあ大半の人が顔知らないので、全然わかりませんでした。樫原辰郎監督(http://twitter.com/#!/tatsu_kashi)もエンドロールでお名前発見!


 車の部品を盗んでその日暮らしをしている高校生、イサキとヒラマサ。しかし、街で絡んだ男女に、喧嘩自慢のはずのヒラマサが一撃で倒されてしまう。その二人が男女ペアの格闘技「アベック」の王者だと知ったヒラマサは、自らもアベックを始めて挑戦しようとする。ジムで知り合ったパラグアイから出稼ぎにやって来た少女コルビーナとペアを組み、デビュー戦にこぎつけるヒラマサ。その姿に自分も奮い立つものを感じつつあったイサキだが、事態は思わぬ方向へ……。


 心斎橋シネマート、二週目木曜日。整理券番号は2番だったのだが、その後も数人しか買っていなかったので、たかをくくってトイレ行って飲み物買ってたら、前から5列目ど真ん中のオレ様の定位置を後の整理番号の奴に取られていた! くそっ、この野郎! と思いつつ、その斜め前4列目の真ん中の席を確保。一息ついてツイッターを見たらば、あれっ、id:sappukei12氏が来てるの? 振り返ったらまさにその席にいました、オレの定位置に! トレードマークの帽子を脱いで横に置いていたので誰かわからなかった。うーむ、やはり映画オタ的にはベストの席なのだよな。
 こうして映画館でバッタリというのはスゴい確率……のようでいて、今作は一週目は一日二回、二週目は一日一回で計二十一回しか上映してないので、約5%の確率で出会ってしまうということになるのである。


 格闘技オタとしては、まず聖地新木場1stリングの登場に感涙(地方在住なので、行ったことはないがね)。いや〜、いいですね、いかにも場末の格闘技興行と言った感じで、倉庫みたいな建物にリングとでっちあげのような座席がある雰囲気がいい。マスコミも一人しか来てないし、狭苦しい会場にファンやら選手やら関係者やらがごった煮になってひしめき合う、ローカル感がたっぷり。控え室の狭苦しさや、プロテストのいい加減さ、練習先のジムもリングなしの掘建て小屋。この業界そのものに全然お金が流れてないことがひしひしと伝わって来る。
 ……んだけど、これって全部が全部、意図的な描写じゃないよね! そんなローカル感の割に、地上派アナログでニュースやってたり新聞記事はカラーで大きかったりと、わざとやってるにしては不徹底。街のチンピラが「アベック」と言えば格闘技、スポーツのことだと知ってたりするし(その割に冒頭の主人公達が全然その存在を知らないのは謎だが)、メジャーなのかマイナーなのかよくわからん! 本当はメジャースポーツとして演出したかったのだが、低予算映画ゆえにこのスケールの描写になったことが、むしろローカル格闘技興行とその規模において奇妙なシンクロを遂げている。その部分を逆手に取って大事にしてほしかったなあ。
 しかし、会場やジムは言うなれば貧乏臭いロケーションなのだが、その質感を見せることでかえって安っぽくはなっていないところが上手い。


 試合のシーンもちょっと少なかったかなあ。たぶん、このルールを実際にやったらもっと簡単に手を離しちゃうので、三本勝負ぐらいにすればいいのでは、とか、逆に決着がつきやすい分、試合数は増やせるし安全だからアマチュア向きだな、とか、手つないだまま素手で殴る最大の必殺技アベックパンチは確実に指折れるよな、とか色々と考えた。まあマンガ原作の架空のスポーツとは言え、もう少し詰めて描けばこれ自体ももっと面白くなったような気がするね。チャンピオンとの対戦を目指す、というストーリーなんだが、あまり深い因縁はなく、過程を大切にし、プロファイターとしての立ち位置に着地するあたりが、割合スポーツ的なだけに。


 青春ものということだが、こちらが当初想像していたよりずっと童貞臭が強い話だったのも驚き……って主役の二人高校生の設定かよ! だからこそ、手をつなぐかどうかぐらいが大事なんだね。でもどう見てもその日暮らしのプーという絵面で、明らかに二十代後半なんですけど! いい大人が何かクサい事を言ってるようにどうしても見えてしまった、うーん。
 ローカル・スポーツに絡めた青春、ということで、うまくはまれば傑作『ローラーガールズ・ダイアリー』のような作品になれたかもしれない……のだが、アメリカにおいてローラーゲームを愛でるような、そういう文化的土壌が本邦にはまったく欠けているがゆえに架空のスポーツが登場し、その描き方も架空であるがゆえに掘り下げ切れないのだとしたら、何かその薄っぺらさに絶望的になってしまうなあ。
 演出はいいし、決してつまらなかったわけではないんだが、青春とは、愛とはというところも少々漠然としていて、細部の説得力に欠ける印象の映画であった。もうちょっと何かに一点集中した方が面白かったような気がするんだが……。ところで、主人公アベックの手のつなぎ方が、途中までは普通のつなぎ方で、最後の試合から指を交差させるいわゆる「やってる」つなぎ方になるのも意図した演出なのかなあ。ちなみにチャンピオンアベックは常にそのつなぎ方で通しているので、おそらくはそういうことだろう、と思うのだが……。

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