"汝らの中で酒を飲まないものだけが、石を投げなさい"『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』


 史上最悪の二日酔い、再び!


 タイ生まれのローレンと結婚することになったスチュ。彼女の母国で結婚式をあげることになり、ダグとフィル、それぞれの夫婦も招待することに。しかし、なんとかアランは呼ばずに済ませようとしたのだが、断りきれなかったのが運の尽き。式場のビーチで焚き火を囲み、ビール一本で済ませるはずだったささやかなバチュラー・パーティ……だったのだが、目覚めた場所はバンコクの汚いホテル! しかもローレンの弟テディの姿が消えていた。俺達は、また、やってしまったのか!?


 良識的な人間(笑)としては、いったい何をどうやったら、あんな惨事をもう一回繰り返すことができるの? というところにまず興味あり。いや……普通は繰り返したくないし、繰り返したくてもあそこまではなかなかできないよね。
 前作の教訓というのは当然生きていて、スチュは最初、バチュラー・パーティの開催さえ阻止しようとする。フィルも最初はそれにブーブーと文句を垂れて日常に楽しみのない妻子もちの悲哀を漂わせるのだが、やってきたタイのビーチの風光明媚さと、未成年者も混じってる状況に対して大人の良識が勝利し、ビール一本だけのパーティで終えようとする。そう、そうですね、正しい姿勢だ。素晴らしい、リスペクトしたい……。だが、世の中にはそんな大人の良識など通用しない、狂人というのが存在するのである。


 そんなこんなで最悪の目覚めを迎え、良くも悪くも前作とほぼ一緒の構図に。舞台は海外に移ってるのだが、基本的に人の都合より自分の都合という三人(……というより海外に来たアメリカ人の典型か)が主人公なのは変わらない。状況のわけのわからなさこそスケールアップしてるはずだが、肝心なとこでは英語が通じるし、「異国に取り残された孤独」といった肌触りは、ほとんど感じられなかったな〜。むしろアメ公はよそにきてもマイペースに大迷惑かけるんだな。「途上国で好き勝手やらかす」のがカタルシスになってて、我々日本人も先進国ヅラしてこのアメ公どもと視点を共有して楽しんでいるとしたら、それはどうなの?という気がしないでもない。次回作は京都あたりでやったら面白いと思うよ。
 ただ、そうして散々やらかした報いというのは当然降りかかってくるわけで、このシリーズはそこらへんのバランス感覚が絶妙である。一つ間違えば人死にが出て人生の破滅へと追い込まれる悲惨さと、そこへ至るまでのあっけらかんとした無邪気さ、繰り返し語られる「バンコクの闇」という台詞。この状況に彼らを追い込んだのは誰なのか? 彼ら自身? 狂人? 酒? クスリ? 答えはどれか一つではなく、錯綜した状況が複合的に絡み合った結果だ。何か一つに責任を押し付け、教条的、イデオロギー的になることを巧妙に避けている。まあアランさえいなければ、だいたい大丈夫だろうけど……(笑)。


 舞台が海外なのにシナリオ的にほとんど関係なく、絵面以上にスケール感が出てないのはマイナスだし、キャラクターの紹介がいらない分の尺もほとんど前作の繰り返しのようなギャグに割いている。だからこその「コメディ映画」なんだなあ、「続編」だなあという安心感もあり、またあんな感じのオチが待ってて、そんな悲惨な事態には陥らないだろうと思える緩さが横溢している。前作は警察署のシーンがちょっと独立したギャグのようになっていて面白かったが、今回はバスの中でのペットボトル使ったギャグのところが、何かほのぼのとして良かったね。
 が、もうちょっと新機軸欲しかったな〜。なんだろ、ダグは活躍させない契約になってるのか? あいつだけ品行方正面してむかつく! 前作で一人だけ「潔白」だった彼の堕落をぜひとも描いて欲しかった。全く飲まない人はいざ知らず、これは酒を飲む人ならば大小はあれど誰にでも起こりうる話なのである。あるでしょう、酔っ払って物壊したり、絡んで人間関係を壊したり、そんな思い出が……! え? そんなことない?


 相変わらず酒酔いによるホモソーシャル感満載、都合よく事なきを得て反省の色はゼロ。今回は新郎が飲み過ぎの張本人なのだが、ラストのマッチョイズム剥き出しの開き直りっぷりも圧巻だ! いるよね、浮気しといてこういう言い訳する奴! しかしこれを何かいい話として着地させ、酒やクスリを肯定していると捉える必要は全然ないだろう。むしろ、破滅と隣り合わせなのにも関わらず、それを認識できずに今回も、そしていつかまた同じことを繰り返す「酔っ払い」という存在の一面を的確に描いていると言っていいのではないだろうか。まあ何せ覚えてないんだからなあ……。
 例えば、別に実際にそういうことがありました、と言ってるわけではなく、単に例として、こういうこともありえるよね、ということで挙げると、オフ会で酔った人に絡まれて、んなこたあオレの勝手だよということであれやこれや吊るし上げられた挙句、翌日には完全にそんなことは忘れられている、ということがあったりするかもしれないし、今後もまたあるかもしれないのである(笑)。あ〜恐ろしい恐ろしい。


 みんなも飲み過ぎには注意しようね!と恐らく何の役にも立たないであろう教条的な繰り言を一応書いておいて、本稿を終えようと思う。いや、面白かったことは面白かったですよ。前作ファンは必見ですね。

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