"十年目の浮気"『赤ずきん』


 童話『赤ずきん』の翻案映画。


 満月の夜、村に現れ生贄を喰らう「狼」と、二世代に渡って共存してきた村。だが、ある満月の夜、禁が破られ、村の娘が狼の爪によって殺される。その妹のヴァレリーは、姉が自分の婚約者であるヘンリーを愛していたことを知り、不審を抱く。なぜ姉は狼の出る夜、外へ出たのか? 狼を退治しようとする村人だが、今度はヘンリーの父が手にかけられる。村にやってきた狼や魔女を退治する宣教師・ソロモン神父はこう告げる。「狼はただの獣ではない。人に姿を変え、この村の中にいる……!」


 バストアップばかりで閉口した『トワイライト』に比べて、監督はちょっとは上手くなったかなあ。しかし、相変わらず見せずに引っ張る部分と、バンと見せる部分のコントラストが弱い。村の中を高速で動き、まともに姿を捉えられない狼の恐怖感を描いた……と思ったら、30秒後にその狼のどアップを映してしまうところで愕然! 出た、CG! もっと引っ張ろうよ!
 セットの作りのせいか、村が建物も人も密集しすぎでスケール感が薄いのももったいないなあ。入り口から50m以内に、全部の建物が集まってるよね。映画の内容には賛否、好き嫌いあるとしても『スリーピー・ホロウ』『ヴィレッジ』『ブラザーズ・グリム』あたりは美術のレベルが全然違うんだよな。


 ゲイリー・オールドマンが安心の悪役ぶり。鉄の象で人を燻製にする悪辣さが素晴らしいね。しかしこのキャラクターのもっともおぞましい部分は最初に明かされてしまうので、後のインパクトはいささか薄い。真の敵が狼であるとはいえ、対比としての「人間」の悪しき部分の役回りとしては、もう少し引っ張って欲しかったかなあ。で、ゲイリーと言えどその程度なので、他のキャラはステレオタイプにまとまってことごとく弱い。元が童話だからって、そんなとこまで薄いままでどうするよ。
 ミステリとしてはまあまあまとまってるが、キャラクターが描き込まれておらず、その結果ミスディレクションが弱いので、だいたい伏線通りに読んでいけば内容はわかってしまう。主人公が真相を目指して能動的に動いているわけではないので、伏線が単に画面上にわかりやすく提示されただけになってしまっており、観ている方も主人公と一緒に「捜査・推理」する楽しみを味わえないのも残念。そんなシナリオだから、主人公のアマンダもいまいち魅力的に見えない。イケメン二人も、なんかすごく木偶の坊に見えるのだよなあ。どっちつかずで状況に流されるままで「意志」を感じないキャラクターが、誰かの共感を呼ぶだろうか?


 大人向けインスパイアとしては、ちょっと中途半端であったかなあ。赤ずきんを大人に設定したのはいいが、設定だけ生々しくしても映像や脚本がついてきてないのが惜しい。せいぜいローティーン向けの内容。寓意を強くして話を練り込むか、もっとエロくもっとグロく映像に凝るか、目指す境地はそこだったと思うんだが……。

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