"時代の幕開けは餃子から"『初恋のきた道』

初恋のきた道 [DVD]

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 ご存知チャン・ツィイーのデビュー作。伝説の始まりを見よ!


 父の死の知らせを受けた私は、母の残る故郷の村へと帰った。若い頃の父はこの村へやってきた教師で、村の娘である母と恋に落ちたという。父のたどってきた道を、もう一度、父と一緒にたどりたいと言う母。私は、かつて聞かされた父と母の物語を思い起こす……。


 もうちょっとほのぼのとした映画かと思ってたら、違いましたなあ。寒々とした現代の寒村で、死んだ夫を想う老母……えっ、これがチャン・ツィイーの未来像!? この歳食った現代の映像がモノクロ、過去回想に突入するとカラーになる構成は面白い。しかし、過去編もじきに雪で閉ざされ、あまりモノクロと変わらなくなってしまった……。


 最初から結婚しちゃったことがもうわかってるので、引っ張る要素がないんですなあ。で、恋の始まりもツィイーの側は一目惚れなんで共感のしようがない。ドラマらしいドラマが生まれず、男の方がすぐに去ってしまい、あとはただひたすらに「待つ女」……。肝心なとこを撮らず、モノローグと長い説明台詞で処理してしまってるのもマイナス。チャン・イーモウって、こんな副音声付き映画撮る監督だったっけ? ディティールが薄すぎて、なにか児童書の映画化みたいなイメージ。子供にはわからないように、ややこしいところは省いて、筋と教訓的なことだけ説明した感じ。
 その描いてる内容も「学校の先生、夫、父を尊敬しよう」という、非常に保守的かつ啓蒙的なことばかりなのも「パス!」だ……。


 クライマックスも、なんかおかしくないか? 勤めしてる息子に母が、「ちょっとの間でも教師になって、少しだけでも教壇に立ってくれれば、お父さんも喜んだろうに……」と言うんだが、え?ちょっとでいいの? その後はやめちゃっていいの? で、それを聞いた息子は、取り壊し前の校舎に子供を集めて、本当に一時間だけ教壇に立つ。いやいやいや、それお父さんが生きてる時にやっても、「教師をなめるな!」と怒られそうな気がするんだが……。


 チャン・ツィイーはかわいいんだが、若かった時だから特別かわいいかというと、そうでもないんだよな。今も最高だから(笑)。みんな『ソフィーの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100115/1263566683)見ようぜ!
 ちなみにアプローチの手法は料理、主に餃子。素晴らしい! 結婚してオレにも餃子を作ってくれ! 田舎だからか、餃子の具はきのこで、きのこ餃子。焼くんじゃなくて蒸す。この餃子を丼に入れて、旅立つ先生の元へ届けるべく疾走するチャン・ツィイー! 後年、ワイヤーで飛翔するようになってからなら、きっと先生の出立にも間に合ったのだろうがなあ……。


 公開当時はけっこう評判になっていて、十年の月日を経てやっと見たわけだが、やっぱりオレとチャン・ツィイーの出会いは『グリーン・デスティニー』がふさわしかったと実感。ふう……。

ソフィーの復讐 [DVD]

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