実際の試合を見ながら振り返る『ザ・ファイター』(ネタバレ)
『ザ・ファイター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110331/1301579597)関連記事、第二弾!
一応、格闘技ブログでもあるので(笑)、それらしい企画ということで、映画の中で登場した試合を動画で観ながら振り返りたい。クライマックスまでのネタバレになるので、もう映画を観た人向けです。
ウォードVSサンチェス
BOXING Micky Ward VS Alfonso Sanchez Round 7
動画は試合が決する第7ラウンドから。
緑のトランクスがミッキー・ウォード。映画では、ウォードがオキーフと共に「右オーバーハンドで攻める」という作戦を立てたが、まるで通用しないという展開だった。動画冒頭に出る予想採点を見ると、「60:52」という物凄い大差がついている。6ラウンドだから、全ラウンドでポイントを失い、ダウンも二つもらった勘定だ。
このラウンドも、序盤から力なく下がり、完全に倒しにきてる相手の強打を浴び、力なくクリンチ。ダメージが大きいのか、ウォードのパンチは精度に欠け、距離感も合っていない。近距離でのフックの空振りが目立つ。このラウンドもズルズル打たれ続けるのか? 英語はわからないが、実況と解説も弛緩したムード。
しかし残り試合時間1分35秒、左フックから左ボディのコンビネーションが突き刺さる。刑務所で兄ディッキーが授け、ここまで実行されなかった作戦「ボディ、ヘッド、ボディ、ヘッド」だ。この時点ではまだ動いていたサンチェスだが、実は相当このボディが効いていたのだろう。身体が丸くなっている。
わずか十数秒後、再び叩き込んだ左フックから左ボディで、サンチェス悶絶!
うおおおおおお! 実況も、
「アンビリーバボー! アーンビリーバボー!」
youtubeの動画なので打撃が軽く見えるが、逆にナイフで一刺ししたかのような切れ味抜群の一発に見えた。7ラウンド中盤まで攻められ続けながら、事実上、たった二発のボディだけで大逆転勝利。鮮やかすぎる……! リプレイ見たら、えげつない角度で入ってるよ。他のパンチは雑に見えたが、この左フック左ボディのコンビネーションは、人が変わったような正確さ。元から得意のパンチだったのだろうが、策としてもズバリ当たったわけだ。
この試合を終えて、ウォードは兄ディッキーのボクシングに対する知識と経験の重要性を、改めて実感することになる。
いや〜、実は映画観ながら「打たれ過ぎだ〜、こっから逆転とか絵に描いたような展開過ぎだろ。お話作ってるんじゃないの?」とちょっと思ってたのだが、帰ってきて動画見直したら、全部本当だったので驚いた(笑)。この試合も、あまりに鮮やかすぎて声出しちゃったよ。ボディでのKOって、美しいよなあ……!
ウォードVSニアリー
続いては、映画のクライマックスの試合をフルでお楽しみ下さい。面倒な人も四つ目だけはぜひ!
序盤から気合い充分、前進して得意の左ボディとアッパーを振るうウォード! 気迫の攻めでまずは優勢に。
やや1ラウンドにウォードのペースに付き合い過ぎたと見たか、ニアリー陣営は作戦変更、2ラウンド以降は足を使ってくる。3ラウンド前半、カウンターを合わされたウォードは足がもつれ滅多打ちに!
しかし後半なんとか押し返す。ノーガード! 出た! これも映画観た時は「無茶やってるなあ、演出?」と思ってたんだけど、ほんとだったのだ……(笑)。
試合は一進一退の大攻防戦に。ラウンドごとに交互にポイントを取り合う接戦!
セコンドにいるのは、もちろん兄ディッキー・エクランド。がんがんに声だしてますよ。
ミッキーというボクサーは、先のノーガードや、打たれた時にグローブを叩いて「もっと来い!」と言ってるような仕種を見せるなど、無骨ながらショーマンシップが感じられ、そこらあたりも実は兄に似ていたのかもしれないですね。
五分の展開で迎えた第8ラウンド。コーナーを出るウォードは、疲労の色が濃い。スタミナではややニアリーか? このまま長期戦になれば苦戦必至か……。2分過ぎ、それでも前に出続けていたウォードに、これでもかと言うほどの強打が叩き込まれ、足が止まる。しかしなおも前進し、頭をつけて接近戦を挑むウォード。ラスト1分を切り、顔面への左フックをヒットさせる。そこからまたも……「ボディ、ヘッド、ボディ、ヘッド」! 三発の左ボディでニアリーの足が揃い、続いての左アッパーでダウン! 何とか立ち上がるが、ウォードはそこからも徹底して得意の左で攻める。左フック、右アッパー、左ボディ、左アッパー、左フック……! 足を使って逃れようとしたニアリーだが、ダメージは明らか。コーナーまで吹っ飛んで、レフェリーが試合を止めた。
リングに駆け入り、弟を抱き上げるディッキー! 共にコーナーに祈りを捧げる……うおおおおおおおお、映画と同じシーンだ! 弟を抱きしめ、語りかけ続けるディッキー。動画の5分30秒過ぎでキスしてるのは、本物のシャーリーンですか? 美人! そして性格きつそう(笑)。勝ち名乗りの瞬間もがっちり隣の立ち位置をキープするディッキー兄貴!
映画、もう一回観たいな〜と思ってたのだが、なんとこの実際の放送の動画で、またも感動が味わえてしまった。映画の再現度の高さがよくわかるし、この試合の結果から「逆算」してクライマックスを盛り上げるために「ボディ、ヘッド、ボディ、ヘッド」のキーワードをちりばめておくあたり、練ってあるなあ。
youtubeには、今回の映画では描かれなかったウォードの試合や、ディッキーVSレナードの「ダウン」シーン、ディッキーのインタビュー等、まだまだお宝映像が上がっているので、興味のある人はぜひ観て下さい。