"あの行動実験再び"『エクスペリメント』
ドイツ映画『es』で描かれた、行動実験を題材にした映画。
失業した男たちが、ある広告を見て集まる。日給1000ドルのその仕事は、それは刑務所を模した施設で2週間に渡って「看守」と「囚人」役を演じて共同生活する、という実験だった。それぞれの思いを抱え実験に参加する男達だが、実験が中止になると報酬が受け取れないという条件と、提示されたルールに縛られる中、徐々にその関係性を変化させ、対立を深めていく。権力を握った看守側は、囚人側を恐怖で支配しようとするのだが……。
囚人側の代表がエイドリアン・ブロディ、看守側がフォレスト・ウィテカー。さすがの演技力で見せてくれるのだが、フォレスト・ウィテカーは少々飛ばし過ぎかな……? 脚本の性急さもあるが、サディスティックな性癖で真っ先にタブーを乗り越える辺り、もう少し引っ張っても良かったような気がする。
100分足らずの尺で、実験期間は二週間……なんだが、結構時間が経つのにまだ4日目? と時間経過自体が少々ネタを割ってしまっているところもあり、構成のもったいなさも目につく。
で、早々と(?)結末が訪れるわけなんだが……うーん、ここにカタルシスを持ってきてしまうところが悪い意味でハリウッド映画らしく、娯楽作品になっちゃってるよね。この題材なら、もっともっとエスカレートして、より多様なシチュエーションや、人間の様々な面を見せ、もっとどぎつい展開にいくらでも持っていけたはずなのに。
で、このラストはないなあ……。なんとなく曖昧にして、無理にハッピーエンドにしちゃったこのラストでは、最初に掲げたテーマもすっ飛んでしまった。
人間は環境と関係性次第でいかなる行動も取り得る、というのは、社会学では初歩の初歩のところですか? そこのところは表現されているので、最低ラインはクリアしているのだが、せっかくの面白い題材がもったいない。
……ところでオレ、『es』観てないんだよね! これは多分、この映画より百倍面白いんじゃない? 観よう!
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