”両雄並び立たず?”『キングコング対ゴジラ』

キングコング対ゴジラ [DVD]

キングコング対ゴジラ [DVD]

 ひさびさ東宝特撮。


 自社がスポンサーになっている科学番組の視聴率低迷にあえぐパシフィック製薬は、テコ入れのために南洋の孤島の魔神の伝説を取材させるべく、撮影チームを派遣する。島で現地人に迎えられた撮影チームは、雷鳴の轟く夜、巨大な獣の叫び声を聞く。一方、北極海において、潜水艦がSOSを残して撃沈される。かつて氷山に閉じ込められ、冬眠していた怪獣……ゴジラが復活したのだった。


 『VSデストロイア』までのシリーズのDVD揃えてたが、見てない作品が何本かあったので、消化することに。これはシリーズ三作目、当時1100万人を動員した最大のヒット作。


 さすがに古い作品なので、戦車のミニチュアや書き割りの背景などはいかにも苦しい。南洋の島の原住民を、顔と身体を黒く塗った日本人が演じているあたりも、さすがに寒いものを感じる。これ、終戦後にこの辺りに取り残された日本人じゃないの?


 が、本田猪四郎円谷英二伊福部昭マンパワーは当時全盛。顔黒く塗った日本人がキングコングを迎える礼拝のシーンも、伊福部ミュージックがかかると、途端におどろおどろしい荘厳なムードが漂うから驚く。
 本編も特撮もプロセスのすっ飛ばし具合が絶妙。キングコングを日本に運ぶ展開の、「どうやって筏に乗せたの?」という突っ込みをテンポの良さで回避し、その後の風船で運ぶシーンはきっちりと見せる。ゴジラを倒すための落とし穴作戦と100万ボルト作戦の矢継ぎ早な仕掛けなど、「壮大なホラ」という感覚が良く出ている。語りぐさになった大ダコの登場シーンの特撮も良い。
 視聴率にしがみつき、危険を顧みない一企業の商業主義はオリジナル『キングコング』を思わせ、社会への風刺として現代でも色あせないテーマ。結局は制御できず、それらの手を離れた二頭の怪獣が激突し、やがて去っていく姿を、「自然には未知の部分があるということを学ぶべき」というテーゼに落とし込むストーリーテリングも巧い。


 初のカラー作品ということで、『ゴジラ』『ゴジラの逆襲』にあった悲壮なまでの叙情性はなくなったが、二大スターが登場するお祭りの対決路線ということで、コメディタッチも含め娯楽に徹した映画。大ヒットによってゴジラシリーズの今後の路線を決定づけた作品だが、やはり両オリジナルを踏まえてこそのもの。そちらを見ておけば深みも増すことだろう。公開当時は、みんなどっちも観てたんだろうね。そのリスペクトゆえに、戦いの結末も引き分けに終わる。作中の台詞に反して、両雄は並び立つ。怪獣映画史において永遠に。

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)